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最初に結論。これだけで判る鼻口蓋管嚢胞
この記事を書いた中の人は、実際に鼻口蓋管嚢胞に罹患し、治療の為の検査や手術を体験しています。同じ病気で困る人の参考になればいいな、と考えて執筆しました。
鼻口蓋管嚢胞(びこうがいかんのうほう、Nasopalatine Duct Cyst)は、口腔内に発生する比較的稀な良性の嚢胞性病変です。以下に、その特徴、原因、診断、治療法について説明します。
特徴
- 発生部位: 鼻口蓋管嚢胞は、口蓋(上顎の前方、前歯の後ろ)にある鼻口蓋管に発生します。
- 形状・大きさ: 直径が0.6~2.8cm程度の嚢胞で、無痛のことが多いですが、大きくなると不快感や痛みを伴うことがあります。
- 症状: 多くの場合、無症状で偶然発見されます。しかし、大きくなると口蓋の腫れや、前歯の根の周囲に圧迫感を感じることがあります。
原因
- 鼻口蓋管嚢胞の正確な原因は不明ですが、胎児発生の過程で残存する鼻口蓋管の上皮細胞が増殖して嚢胞を形成すると考えられています。
診断
- 視診: 口蓋の腫れや隆起を確認します。
- 画像診断: 歯科用X線やCTスキャンを用いて嚢胞の位置や大きさを評価します。嚢胞は、X線上では骨の中の透明な領域として見えることが多いです。
- 病理組織検査: 穿刺吸引によって得られた液体を顕微鏡で観察し、嚢胞の性質を確認することがあります。
治療
- 経過観察: 小さく無症状の場合は、定期的な経過観察が行われることがあります。
- 外科的摘出: 症状がある場合や、嚢胞が大きくなっている場合は、外科的に摘出することが推奨されます。手術は一般的には局所麻酔下で行われ、口蓋から嚢胞を取り除きます。
- 予後: 手術後の再発は稀であり、治癒後の予後は良好です。
フォローアップ
- 治療後は定期的なフォローアップが推奨され、再発や他の合併症の有無を確認します。
鼻口蓋管嚢胞は比較的稀な病気ですが、適切な診断と治療を行うことで、良好な結果が期待できる病変です。患者が口腔内に異常を感じた場合、早期に歯科医師または口腔外科医に相談することが重要です。
鼻口蓋管嚢胞は自覚症状無しでゆっくり大きくなる
「上顎側の口腔内がぷっくり腫れてるけど、どうかしたの?」
私の記憶が正しければ、通院していた歯科医にそう尋ねられたのは、2022年の初旬頃だったと思う。
上顎側の口腔内、口蓋の真中がプクリと盛り上がって、一見化膿でもしたかの様な状態になっているというのだ。
痛み等の自覚症状は無く、偶に、鼻を咬むと鼻と口の間辺りに軽く疼痛を感じ、ちょとした違和感を感じる事はあったが、ただそれだけだった。
私は慢性的な副鼻腔炎で、長く耳鼻科に通っていた。歯科医はそれを知っているので、口蓋部分の腫れを耳鼻科でちゃんと診てもらう様に、との指示を受けた。
それに従って耳鼻科に行った時、口蓋部分の腫れを相談してみたのだが、しかし診察してくれた耳鼻科医からは「いや別に異常ないよ」としか返って来なかった。
異常ないなら、まあ暫く様子を見てみるかと、その時は大して気にせずに放置した。
その後、歯科医で口蓋部分の腫れが気になると言われ、耳鼻科で診てもらっても異常ないと返される遣り取りを、2022〜2023年中に何度か繰り返した。
だが、2023年も終わりに近付いた12月、痛みは無いのだが、自分でも例の腫れに違和感を感じて、確認の為に指で触ってみると、前歯の後ろ辺りがぷっくりと膨れ、ブヨンブヨンと弾力のある柔らかさを感じた。
偶々、気になった次の日が歯科医の予約の日だったので、上顎口腔内の腫れが自分でも気になってきたと告げると、「前より一周り大きくなってるよ」と、歯科医が写真を撮って見せてくれた。
画像を目の当たりにすると確かに、口蓋周辺の口腔内粘膜が白っぽくなっており、小指の爪くらいの面積が白っぽく変色し、明らかに盛り上がっていた。
そして同時に、その頃より上の前歯2本が微妙にぐらぐらとし始めた。
自分でも、この状況は流石に異常だと思い、耳鼻科で「歯科で写真撮って見せて貰ったら、結構腫れてるんですよ」と、訴えると、「悪いものではないと思うけど、中で化膿でもしてるのかな?」耳鼻科医に抗生剤を処方して貰い、暫しの経過観察となった。
年は2024年へと変わった。
新年早々から、腫れは回復の兆しを見せず、寧ろ鼻の調子も以前た比べ頗る悪くなる。
抗生剤と経過観察で時間は流れやがて3月。
その頃には、歯の根元にムズムズとする痛痒い不快感が生じる様になった。そして、或る朝起きると、口腔内に鉄錆めいた血の味がした。
ああ、これはかなり駄目な奴だ。流石に危機感が強くなり、その日のうちに検査を受ける為、CTを撮れる設備のある個人開業の耳鼻科を新規で受診した。
僥倖なも、受診して当日に即CTを撮って貰えた。その画像には、鼻と口の真ん中辺りに結構大き目の、腫瘍なのか嚢胞なのか、異常を知らせる楕円形の影が映っていた。
「ああ、これは大きな病院でちゃんと検査して貰わないと駄目だね。うちではこれ以上の検査や治療は無理だから」と耳鼻科医に告げられ、CT画像をCD-Rに妬いて貰い、医療情報提供書も書いて貰い、総合病院へと向かう事になった。
検査して病名が鼻口蓋管嚢胞と判明
総合病院を受診すると、部位的に該当するのが耳鼻咽喉科なのか口腔外科なのか、病院側も判別に困り、一度両方受診して下さいという事になった。
その間、先ずレントゲンを撮り、次にMRIを撮るという流れが決まったが、大きい病院は何をするにも予約制で、レントゲンは直ぐに撮れたが、MRIを撮るのは最短でも10日待ちだった。
正直もうこの時点では口腔内の腫れがかなり大きくなり、慢性的に歯の根っこ辺がムズ痛いし、嚢胞が鼻腔を下から圧迫する所為で、鼻の通りも悪くなって最悪だった。
10日を待つのが辛かったが、仕方ないので我慢して待った。
そして待ち侘びたMRI撮影日。撮影が終わると口腔外科を同日に受診。担当医師がMRI画像を見て、「水に近い、もしかしたらゲル状の何かが溜まっている」と判断。この時点で、担当が口腔外科に決まる。
「歯の裏側から口腔内の粘膜を切って、中の様子を観察して、検査用に組織を一部切り取りましょう」
そうして生検に出す組織採集の為の手術が決定する。しかし、この手術、医師は嚢胞の中を確り調べたいので入院して貰って全身麻酔で施術をしたいという。
個人的に未だ検査段階のオペで入院なんて以ての外、真っ平である。
外来と局所麻酔で何とかならないのかと尋ねると、渋々ながらも出来るといい、日帰り可能な外来での手術を承諾してくれた。
医師としては、患者の意識のある状態でのオペは、やはりやり難いのだと思う。術後、病院に一泊させる事で、万が一の事態に備える意味もあるのだろう。
私の場合、入院なんかしたらストレスが溜まるので、全力でお断りなのだが。
口腔外科の医師が、外来での日帰り手術を割とあっさり了承してくれたのは、予め掛かり付けの精神科の医師に相談して「こいつは入院に否定的で拒否反応を起こすので、入院させると病院に迷惑が掛けるし、本人の為にもなりません。可能であれば外来でお願いします」的な内容の医療情報提供書を書いて貰らい、初診時に提出する根回しを行っていたからであろう。
そしてまた1週間を待たされ、やっと検査オペの当日が来た。
診察台の上に寝転がり、上顎側の口腔内に数箇所キシロカインを注射されると、上顎の前歯4本程の幅で、歯の直ぐ後ろからメスで切開され、その切り目から粘膜をベリッと開かれると、問題の嚢胞が顔を覗かせる。
本来、口腔内の粘膜を切ったら歯槽骨が見えてくる筈なのだが、嚢胞が大きくなり過ぎて、鼻の下から前歯の上辺りの歯槽骨が全部、嚢胞に侵蝕されて既に消失していたらしい。口と鼻が繋がる寸前だった訳だ。笑えない。
そこそこ硬いのか、嚢胞の一部をガリガリやって孔を開けると、中から赤黒い液体が溢れ出た。嚢胞の中には、正体不明の謎の体液がタップリ詰まっていた様だ。
その後、歯と歯の隙間を通す様に、歯の裏から針を入れて表に出すという形で粘膜を縫合。
歯と歯の間からちょろんと飛び出す縫合糸のお陰で、歯と歯の間に物が詰まった様な違和感が凄かった。
採集した嚢胞の組織片と体液は生検に回された。但し、結果が出るまでにまた1週間待たされる事になる。
たがこの時点で、中身の体液が全部抜けてくれたお陰でパンパンだった嚢胞が多少窄んでくれたのか、様々な不快感から久しぶりに開放され、実に爽やかな気分になった。
これが話に聞く、「新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~~~~~~~~ッ」という清々しい感覚なのだろうか。
↓前歯の裏からメスを入れて嚢胞を調べる為に口腔内の粘膜を捲っている↓
↓嚢胞の中に溜まっていた謎の体液。味は薄い塩味↓
1週間後、検査の結果、「鼻口蓋管嚢胞」と診断されました。
↓私はこれで自分の口の中を映しました。↓
鼻口蓋管嚢胞を切除すると前歯が抜け落ちる件
鼻口蓋管嚢胞は悪性では無いのだが、それでも放って置くとどんどん大きくなり、やがて歯槽骨を壊滅的に吸収していってしまう。
自然治癒は望めず、治療するには当然、袋を綺麗に切除して全摘出してしまう必要がある。嚢胞が小さければ、検査時の時と同じ様に口腔内の粘膜を切開して、ちょいっと捲って嚢胞を抉り出せば良いのだが、私の膿疱は流石にサイズが大きくなり過ぎていた。
嚢胞が前歯の根元にまで至っており、実際、無くなった歯槽骨の代わりに嚢胞が支えになって前歯が持ち堪えているみたいな有り様で、今直ぐに嚢胞を取り除いてしまうと、引っ掛かりを無くした前歯もそのまま抜け落ちてしまう可能性が高い、と酷な現実を告げられた。
そもそも嚢胞自体がかなり大きいので、摘出も簡単ではなく、現段階だと口腔内の粘膜を広範囲に大きく捲る必要があり、全身麻酔でしかオペは無理です。施術時には必ず入院して下さい、とも言われた。
前歯を無くすのは嫌だし、出来れば入院もしたくない。そこで医師から、その2つを回避する為の冴えた選択肢を提示される。
それが、開窓と呼ばれる施術だった。
口腔内の粘膜を切り取って穴を穿ち、そこにカーゼを詰めて傷が塞がるのを阻止する。結果、嚢胞内に謎の体液が溜まらない様になる。
その状態を数ヶ月から1年程度維持すると、あら不思議、失われていた歯槽骨が徐々に回復して行き、反対に嚢胞は縮んで小さくなるらしい。
運が良ければそのまま完全回復するかも知れないし、そこまでは無理でも嚢胞が萎縮して小さくなれば摘出も容易になり、外来での手術で、入院せずで日帰りも可能になるのだそうだ。
時間は掛かるが、なんと都合の良い素敵な提案なんだろう。当然その方針でお願いした。
開窓手術は勿論外来で大丈夫ですよね、と医師に確認したら、まあ外来でなんとかやりましょう、と医師から渋々にだが承諾を貰え、今回も入院を無事に回避した。
しかし、肝心のオペの予定を入れられる日程が、またまた今回も約1月も先だった。
大病院は本当に待たされるのがデフォルトになっている。毎度毎度長いよ、と嘆きながらも、こればっかりは待つしか仕方無い。
さて、検査オペの術後だが。上顎の前歯の後ろの粘膜部分が非常に痛かった。
その晩の食事は、或る程度以上の硬さの食物を口に入れると、まるで粘膜に何かが突き刺さったんじゃないかと思える程に刺激的で、一口何かを食べる度に、口腔内に激痛が走った。
その状態は暫く続き、2、3日はお粥やうどん等、本当に柔らかい物しか食べられなかった。
歯を磨けば歯ブラシが血で朱に染まり、うがいをすれば吐き出す水が赤かった。
しかし、その辛い状況も、1週間も経って抜歯した頃には大凡回復して、2週間で殆ど痛みはなくなった。
だが、傷が塞がると同時に、また体液が嚢胞に溜まり始めたのか、上顎の口蓋部分が徐々にぷくぷくと盛り上がり出した。
そうなるとやはり、再び歯の根元のムズ痛さと、鼻腔の圧迫感が復活する。
オペまでの残りは2週間。日に日に鬱陶しさを増す嚢胞で生じる不快感に耐えて、辛い時には痛み止めのカロナールを飲んで誤魔化し、何とか日々をやり過ごした。
鼻口蓋管嚢胞の開窓オペ当日
2024年5月28日、待ち侘びていた開窓手術の当日がやって来る。
その日は生憎の雨。風も強い。天候の悪さが祟ったのか、病院に到着したら予約時間直前ギリギリになってしまっていて焦った。
処置室(手術室ではない)に入って診察台で横になると、口蓋部分の粘膜に何箇所も麻酔を打たれる。キシロカインが嚢胞の周囲に結構な量注入された所為で、歯の根元への圧迫感が強まり、実に苦しかった。
麻酔後、暫くしてから医師が口蓋部分の粘膜を丸く切除して穴を開け始める。その穴のサイズは、自分の予想サイズよりも結構大きかった。
止血の為に切開部分の粘膜を電気メスで隈無く焼いてくれるのだが、その間中、ジジジと粘膜組織が焼ける音が聞こえるし、タンパク質が炭化するので、髪の毛を燃やした時と同等の独特の焦げ臭さが鼻腔を擽った。
然れど、そう大した時間も掛からず処置は終了した。電気メスで焼いたので、今回は縫合も無し。生検の為の組織採取の時よりも、手術を受ける側としては今回の方が楽だなと思った。
この時点でやっと、鼻口蓋管嚢胞が原因の、歯の根元に掛かる不快な圧迫感から、嬉しい事に本格的に開放されて、実に一安心。
医師が開けた穴の内部をカメラで撮影する。その画像を見せて貰うと、歯槽骨の侵食度合いがやはり半端ではなかったみたいで、穴の向こう側には鼻の裏側が見えており、鼻と口の間に空洞が存在するとか、何ともヤバめの光景が映っていた。
最後に、嚢胞が作った歯槽骨の空洞に、軟膏を塗ったガーゼを詰めて貰い、手術は終了した。
歯槽骨が復活して穴が塞がるまで、暫くはこの状態での経過観察になります。
骨を再生する材料として、食事の時にカルシウムとビタミンDを意識して多めに摂った方が良いのかも知れない。
↓施術後に口蓋粘膜に空いた穴。奥に見えるのは鼻の裏側。↓
術後当日の夜、検査の時とは異なり、傷口の痛みはそう大した事はありませんでした。これは痛い思いとは無縁で術後の回復は楽勝だな、と軽い気持ちで侮ったのが悪かったのか。
術後翌々日の晩。出術当日と翌日の昼は取り敢えず控えていた塩や醤油で確り味付けした食事を、2日目の夜からは解禁し、飲んだり、食べたりを再開したのですが、どうやら調味料の何かしらの成分が傷口に沁みるのか、物を食べる度に、ワンテンポ遅れて粘膜の傷がジンジンと痛み始めるのです。
水を飲んで口の中を洗浄し、暫くすれば痛みは治まるのですが、治まるまでの間が割と長くて実に鬱陶しい。
そして術後4日目の昼に、中華料理店でニンニクの効いた野菜炒めを食べたら、嚢胞内に詰めてあるカーゼに臭いが染み込んでしまい、その後半日くらい、口の中にずっとニンニク臭が漂う羽目に陥ってしまいました。これにはかなり参りました。
毎度毎度の食事の時、食べている途中から時間差で傷口が痛くなり始め、食べ終わっても暫くは傷の疼きが続くので、かなり不快でしょうがありません。
食物に含まれた塩分や香辛料が傷口を刺激して痛みが発生するのでしょうか。
面倒なのは、食後の痛みが中々治まらず、それに誘発されるかの如く、鼻の中に水が入った時の様な違和感を覚え、頭痛までしてくるのです。種類としては、かき氷を一気に食べた時に蟀谷がツーンとする、あの時の痛みに類似した感じの頭痛です。
取り敢えず記事はここで〆ますが、事後経過に関しては、今後、変化があったらまた続きを書く予定です。