手根骨の舟状骨骨折 交通事故 横から追突される 手首固定用装具(サポーター)が活躍する

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怪我や病気
Dr.
Dr.

あっ、折れてますねぇ。
これは、舟状骨骨折です!

或る日の人災 交通事故

 それは2024年3月下旬の事。宵の口な時間帯、食料品の買出しにスーパーへ行き、運良く見切り品の半額弁当や幾品かの惣菜を買えて、ほくほく満足気分で帰路についたところ、どうやっても避けれないだろうというタイミングで、お爺ちゃんの運転する車が横から突然飛び出て来て、自分の運転する車の右フェンダー辺りに突っ込んでくれた。結果、自分の車は左へ跳ね飛ばされ、更に追い打ちで道路の側壁に激突。速度はそんなに出てなかったので、そこまで大惨事にはならなかったけれど、2重の衝撃でハンドルを握っていた右手首を変な風に捻ってしまった。

 痛い。兎に角、手首が痛い。親指の付け根辺りも強烈に痛い。もしや折れた? でも指は動く、手首も激痛が走るけど動ごかせるので、折れてないのか? 衝突のショックなのか身体がブルブル震えるし、思考が混乱する。愛車、結構な高年式でもう出ない部品が多いんだけど、ちゃんと直るのか? 色々不安になりつつ警察が来るのを待つ。

 現場検証が終るまでの一時間ほどを痛みに耐えながら尚も待つ。割と地獄。自分が凄く痛がるので、警察の人から「それ折れてない? 手首動いても、めっちゃ痛いなら折れてる可能性高いよ」恐ろしいアドバイス。相手と連絡先を交換し、痛みに呻きながら遅々と時間が経過していき、やっと現場検証が終わる。

善意の装具 手根骨骨折の疑いあり!

 警察から解放された後、取り敢えず知人の経営する接骨院へと電話一本入れてから向かう。手首を診てもらうと「これ、折れてる痛がり方だよ。今直ぐ病院の救急外来へ行って、レントゲン撮らないと」アドバイスを受け、「お金は後でいいからこれで手首固定して」と善意の装具(サポーター)を装着して貰い、大きい総合病院へと向かった。

手根骨 折れているのか? いないのか?

 病院に到着すると時刻は既に夜の11時を回っていたが、ERは結構混んでいて待ち時間が長い。特にする事がなく待合室で座っていると、手の痛みがどんどん増してくる。比喩ではなく実際、無意識に呻き声が漏れ、全身に冷や汗が浮かぶレベル。装具のお陰で手首が保存されて、多少は痛みが和らいでいるんだろうけど、それでも痛い。自分の中で、折れてる疑惑が強くなる。

 一時間ほど待たされてやっとレントゲン撮影。深夜のERの診察室には当然、宿直当番の研修医しか居ない。画像を観た研修医は「ううん。多分折れてなさそうだけど、専門じゃないのでなんとも。改めて診療時間内に整形外科を受診し直して下さい。そのサポーター悪くないです。入浴時以外ずっと付けてて下さいね」判断とも言えない診断を下す。帰宅前に痛み止めのロキソニンを処方して貰えただけでも儲け物。その場で直ぐに飲む。30分くらいで薬が効いてきて、やっと痛みが少し収まる。でも痛い。

 翌日、祝日だったので整形は休み。折角の休日だというのに、8時間おき間隔でロキソニンを飲み、痛みを誤魔化しつつ家で過ごす。WEBで無料の小説を楽しもうとするも、右手が痛くてマウスすら握れない。じんわり手背が腫れている。仕方なく、左手でぎこちなく操作する。飯を食おうとしたら、箸が持てない。此処でも左手に頑張って貰う。原始的な手掴みも併用。

 更に翌日。消炎効果もあるロキソニン漬で1日過ごしたお陰か、痛みも腫れも少し落ち着いた。午前中に、昔から行き付けの整形に赴く。相手の車の保険屋に、通う病院を予め電話報告しておいたので、病院に行くと既に事のあらましは説明済だった。ここで改めてレントゲンを撮影。先生曰く「現状折れてないように見えるし、多分大丈夫だと思うけど、1週間後にもう一度レントゲン撮り直してみないと、未だ何とも言えない」。骨折というのは、受傷直後は折れた骨がズレておらず異常が見つからない時が屡々あるらしい。暫くしてからの再検査で骨折線が顕れて、やっと骨折だと判明する場合もあるのだそうな。ロキソニンの追加を処方して貰い、その日は別段特別な処置を受ける事もなく帰宅。

 その後一週間。痛みは日に日に治まっていくが、やはり断続的にズキズキと強い痛みが走る。右手が疼く。真面目な話、静まれ俺の右手状態。ロキソニン漬の一日を繰り返す。一応、当初の如何にも骨折然とした激痛の迸りは時間経過で緩やかになっていく。だが、回復しない酷い捻挫が続いている様な気分。どうも内出血がある様で、この頃には手首周辺がキャビン・フィーバー(皮膚病感染がテーマのホラー映画)めいて青黒く染まる。腫れだけは引いた。

こーゆーのは折れてるといわんのか?(舟状骨の骨折確定)

 翌週、右手首をサポーターで固定したまま整形再び。診察。先生何故か呑気に「うん、大丈夫そうだね。そろそろサポーター外さないと手首固まるよ」。「いやいや、未だスゴイ痛いし、大丈夫じゃないよ。レントゲンの再撮影するって先週言いましたよね?」と返すと「挫傷だと思うからもう大丈夫そうだけどね。まあ、心配ならレントゲン撮っとく?」先生全く危機感がない。「勿論」と応えて、レントゲンの再撮影。そうしたら確り出ました、骨折線。驚き顔の先生に「MRI撮ってきて」と言われ、同日の午後、検査専門の病院を新たに受診し今度はMRIに挑む。棺桶みたいな筒に50分位突っ込まれて、耳に喧しい拷問めいた騒音に晒されながら、右手の磁気共鳴画像を撮影。そのデータをCD-ROMに焼いて貰い、再び整形へと舞い戻る。MRIを見た先生から「右手の手根骨、舟状骨骨折してるね」と診断を下される。 

見出し元ネタ

舟状骨とは

 手関節にある8つの手根骨の内の1つ。母指(親指)側にあり、重要な部位らしい。船底のように彎曲しているので、舟状骨と呼ばれるのだとか。他の指骨に比べて45度斜めになっているので、レントゲンを撮っても骨折が判り難く、見逃されてしまう事がある。

 折れると腫れて激痛が走るが、時間と共に腫れは引き、痛みも薄れる為、捻挫と勘違いされて放置される事も屡々。更に、血行が悪く骨折すると治り難いという難儀な部位でもある。骨折したまま適切な処置なしで放置すると治り切らず、骨の分断が残ると偽関節が形成されてしまう。

 偽関節とは、その部分が本来は関節ではないにもかかわらず、まるで関節が如くに動く様になってしまう症状。偽関節が生じ悪化すると、手首の関節の変形が進行し、慢性的な痛みが手首に生じ、力が入らなくなったり、可動域が狭まったりと、徐々に様々な不具合が発生してくるそうな。交通事故で偽関節になると、後遺障害等級7級9号、もしくは8級8号の該当になるらしい。

 治療には慎重に成らざるを得ない舟状骨骨折だが、受傷後早期なら、ギプス固定による保存療法で治癒する場合もある。しかし、血液供給が乏しいという特徴を持った癒合不全を起こし易い、兎に角、折れたら面倒この上ない骨なので、保存療法で治そうとすると、かなり長期の固定を要するらしい。捻挫だと思って固定せずに動かしていると、最初は良いが骨折部分が徐々にズレてきて、やがて強い痛みが出るようになり、その頃には既に外科手術が必要な手遅れ状態となっている場合も多い。

舟状骨骨折は結局手術する事に

 癒合不全に定評のある舟状骨骨折が判明したこの時点で、整形の先生からは外科手術を勧められた。石膏ギプスを使った保存療法で済ますのなら最低8週間の固定は必要だそうだ。独居で右手を固定された不便な生活を8週間も送るのは御免被るので、ここは素直に手術を選択である。手術は、手首を切開してスクリューの先端を突っ込み、舟状骨を串刺し状に貫いて、骨折箇所がズレない様に固定してしまう。簡単に言えばそんな術式。専用の電ドリを使ってやるので、木の板に木ネジを打ち込むかの如しにスクリューを捩じ込む。大凡どういう処置かご想像は付くんじゃないでしょうか。

 手術は、後々に生じる可能性がある後遺症を回避する為にも推奨らしい。しかし、そこの整形外科には手術の為の設備がない。因って、提携のある大きな病院に医療情報提供書(通称、紹介状)を書いて手術自体は他所任せになるらしい。混んでるし待たされるし、大きな病院は遠慮したい。

 先生からは、2つ大きな病院の名前を挙げられ、どっちにすると問われたが、正直大きな病院で手術となると、前日入院、術後更に1泊して、最低でも合計2泊3日の入院を強要される。後に保険屋から示談前提で貰える慰謝料的には入院を経験しておいた方が多くなりそうだが、金の話は抜きで、感情的に入院は絶対に嫌だった。愛すべき家族であるペットが居るので、預け先見付けるのも大変だし。

 なので大きな病院の紹介は断り、外来で日帰り手術をしてくれる入院施設のない個人開業病院をWEBで探して、電話確認した処、舟状骨骨折の日帰り手術OKの返答を頂けたので、行き付け整形の先生には、その病院宛の医療情報提供書の制作を依頼した。

 長くなってきたので、この先は一先ずto be continuedとして今回はここで終わる。結尾としては、事故当日、受傷直後に接骨院の先生の善意で装具(手首のサポーター)を提供して貰え、ずっとそれを装着していたお陰で、舟状骨の骨折分断部分が大きくズレてしまう事なく済んで、偽関節形成の危険性を多少でも回避出来てて良かったね、って事である。いやもう、〆はサポーター様々って話。

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 舟状骨は、転んだ時に背屈状態で地面に手をつくと骨折を生じ易いとか。皆さんもお気をつけ下さい。心当たりのある場合は、どうせ捻挫だろうと素人判断で高を括らず、痛みが長引くなら念の為に整形外科を受診して下さい。

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