記事の概要
生乾きの状態の洗濯物や、使って湿ったタオルやバスタオルに、イソプロパノールを噴霧してから干しておくと、再び湿った時の生乾き臭が消えるよ。
4L入のイソプロパノールを買う
イソプロパノールは酒税が掛からない第二級アルコールで、消防法に定める分類では、第4類危険物のアルコール類に該当します。エタノールと類似した効果を持ちますが、イソプロパノールの方が安価で買えます。
それは何に使う物なんだというと、脱脂や殺菌、殺ウイルスに使います。
イソプロパノールは、色を塗る前や接着面の脱脂に使えます。シール剥がしやブチルテープのネバネバを取るのにも使えます。グリスを落とすのにも使えますし、汚れた電子基板の丸洗い洗浄にも使えます。
昔は、150ml入の小瓶がホームセンターで98円で買えたので、主に洗浄用にそれを愛用していました。
しかし、最近の物価上昇の煽りを受け、気付けば150円に値上がりしていたので、今回から徳用サイズでリッター辺りの単価が安い製品を買いました。
今回買ったイソプロパノールは、工業用であり消毒用ではありませんが、薄めれば普通に殺菌、殺ウイルス用としても使えます。(但し、メーカー非推奨。自己責任で)
今回は徳用の大入り容器を買ったので、部屋干しする洗濯物の嫌な生乾きの臭いを消す為にも利用します。
要するに、生乾きの衣類の嫌な臭いの原因である雑菌をイソプロパノールで殺して、臭いの元を断つ訳です。
殺菌に使用する場合は、原液濃度のままでは拙いので、70%に薄めてから(根拠、頁内リンク)、霧吹用の容器に入れて使用します。
生乾きの洗濯物は何故臭い?
生乾きの衣類の臭いは、繊維に付着した雑菌が繁殖している為に発生します。
雑菌の正体は何かというと、洗濯槽のカビや人間の粘膜に住む常在菌「モラクセラ菌」が臭いの元凶となる様です。
特に「モラクセラ菌」は、シュードモナス目に分類されるグラム陰性菌の一種で、雑巾めいた悪臭4-メチル-3-へキセン酸を生成して、生乾きの衣類を臭くする迷惑な悪臭発生菌です。
この「モラクセラ菌」は、洗剤を使って洗濯しても死なないし、完全に落とし切ることは不可能で、紫外線や乾燥にも強いので外干しで直射日光に当てても死滅しません。
衣類が完全に乾燥している間は臭く無くとも、湿ると忽ちに繁殖して臭いを発生させるので、汗を掻くと衣類が臭い出すのは大体「モラクセラ菌」の所為かも知れません。
手を拭くタオルなんかは、「モラクセラ菌」の餌となる皮脂が付着するのに加えて、吸収した水分で濡れるので、嫌な臭いがとても出易いです。
ただ「モラクセラ菌」は、熱に弱いので、コインランドリーの乾燥機で強制乾燥させたり、アイロンを掛けたりすれば死滅します。しかし、家で洗濯をして室内干しで乾かした場合等は「モラクセラ菌」が安易に増殖します。
そこで、手軽な一手間で「モラクセラ菌」を殺菌する為に、購入したイソプロパノールを利用する事にします。
使い方は簡単、イソプロパノールを霧吹用の容器に入れてから水で70%くらいに薄めます。水道水で問題無いです。
生乾きのシャツやタオルに70%のイソプロパノールを噴霧します。するとイソプロパノールが「モラクセラ菌」を殺し、その後にイソプロパノール自体は揮発して衣類には残らないので、本当に噴霧して干すだけです。
タオルの場合は、手を拭いた後にイソプロパノールを噴霧しておきます。バスタオルなんかも、一度使ってから乾かして何度か再利用するのなら、使った後にてイソプロパノールを噴霧してから干しておけば、2回目以降に使った時の「モラクセラ菌」が原因で発生する嫌な臭いを防げます。
枕やクッションの殺菌や臭い消し目的で噴霧するのもOK。イソプロパノールは揮発性なので、簡単に洗濯出来ない物の除菌、殺菌に安心して使えます。
常用する手首サポーターの臭いの原因をイソプロパノールで除菌する
事故で右手の舟状骨を骨折してから手首に医療用のサポーターを常用しているのですが、このサポーターが結構直ぐに臭くなるんです。
洗っても、朝から付けていると夕方くらいには何か微妙に臭い。そこで、購入したイソプロパノールを、こまめに噴霧する様にしてみました。噴霧した直後はサポーターが少し湿りますが、元々乾きやすい素材なので、扇風機の前にでも干しておけば直ぐ乾きます。そうしたら効果覿面で、臭いもしなくなりました。
殺菌、殺ウイルスにイソプロパノールは非常に効果的です。同じ殺菌、殺ウイルス剤のエタノールに比べると、一部のウイルスに対してはエタノールの方が消毒効果が優れているらしいですが、イソプロパノールでも「モラクセラ菌」は確り殺菌してくれる様なので、衣類の嫌な臭い対策に使うなら問題ありません。
ただ、こまめに消毒すると原液の消費が激しいです。4Lのプラ容器より、大容量18l入りの一斗缶で買った方が単価が安いので、今度は一斗缶で買っても良いかも知れません。
一斗缶だと、空になった缶の処理が面倒そうですが。
イソプロパノールは臭気が強い。毒性も(エタノールと比較すると)強い。
イソプロパノールが揮発すると、エタノール以上にかなり強いアルコール臭がします。
イソプロパノールは眼に対し強い刺激があり、誤って飲み込んだり吸引したりすると人体に悪いので、使う時は換気に注意する必要があります。
消毒用として使われるエタノールとイソプロパノールの毒性を比べると、イソプロパノールの方がエタノールの2倍毒性が強いらしいです。
またイソプロパノールは、脱脂作用が強力なので、薄めて手の消毒に使うと脂分が飛んで手がカサカサになり易いです。
しかし価格はエタノールよりも安いです。そして、エタノールとほぼ同等の消毒効果を持ちます。
イソプロパノールの殺菌・殺ウイルス剤としてのスペクトル
イソプロパノール(イソプロピルアルコール、IPA)は、広範囲の微生物に対して効果的な殺菌・殺ウイルス剤として知られています。そのスペクトルは以下の通りです。
菌類
- グラム陽性菌: イソプロパノールは、スタフィロコッカス・アウレウス(黄色ブドウ球菌)やストレプトコッカス・ピオゲネスなどのグラム陽性菌に対して有効です。
- グラム陰性菌: 大腸菌(Escherichia coli)や緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などのグラム陰性菌にも効果的です。
ウイルス
- エンベロープウイルス: インフルエンザウイルス、コロナウイルス(SARS-CoV-2を含む)などのエンベロープ(脂質膜)を持つウイルスに対して強力な効果があります。
- ノンエンベロープウイルス: ノロウイルスやポリオウイルスなどのノンエンベロープウイルスに対しては、効果が限定的です。
真菌
- カンジダ属: カンジダ・アルビカンスなどの真菌にも有効です。
効果の仕組み
イソプロパノールは、タンパク質の変性と細胞膜の溶解を通じて微生物を殺す働きがあります。
特に70%濃度のイソプロパノールが最も効果的とされています。これは、高濃度のアルコールは速やかに細胞膜を硬化させ、内部のタンパク質に達する前に微生物を殺しきれないためです。
しかし70%濃度まで薄める事で、アルコールと水が適度に混ざり合い、細胞膜を溶解しながら内部のタンパク質にも効果を発揮します。
注意点
- イソプロパノールは炎症性が高く、火気の近くで使用しないようにする必要があります。
- 皮膚や粘膜への長時間の接触は避けるべきです。特に敏感な肌や傷口には刺激を与えることがあります。
イソプロパノールは、家庭や医療機関で広く使用されている安全で効果的な消毒剤ですが、適切な使用方法を守ることが重要です。
エタノールとの違い
親水性ウイルス(ノロウイルス、アデノウイルスなど)に対する殺ウイルス剤としての効果は、エタノールに比べて劣っています。
参考
https://jp.mitsuichemicals.com/en/ps/pdf/67-63-0j.pdf
コバエやゴキブリの駆除にも使える
夏場になると水回りに発生する鬱陶しいコバエ。イソプロパノールのスプレーはコバエ駆除にも使えるそうです。
昆虫が呼吸をする為の気門は、水気を避けるのに油分で護られているのですが、イソプロパノールのスプレーを掛けると、その油分が溶けて気門に詰まって呼吸出来なくなって死んでしまうという訳です。
ゴキブリに台所用の中性洗剤を掛けると呼吸出来なく死ぬのと同じ原理ですね。高濃度のイソプロパノールのスプレーで実はゴキブリも殺せます。
イソプロパノールの場合、殺虫剤や中性洗剤と違って、使用後は自然に揮発するので、室内でも安心して使えるというのが良いですね。