「デス・マングローヴ ゾンビ沼/MANGUE NEGRO」 映画の感想、あらすじ、ネタバレ 血が黒いブラジル産ゾンビ映画 Unsanitary Horror

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映画

製作国ブラジル2008年 日本公開2014年 ブラジルの亜熱帯地帯のゾンビ映画 感想的な紹介

 制作費は約5 万レアル(約145万円)。吹き出す血がタールの様にどす黒く汚い。登場するものが全て不衛生で貧しい。
 一部のファンに人気を誇るロドリゴ・アラガォン監督の記念すべき処女長編映画である「デス・マングローヴ ゾンビ沼」、前々から気にはなっていたんですが、今更やっと鑑賞しました。

 2008年制作ですが、中身は80年代のホラーを思い出させる様な汚い……最初から最後までずっと不潔感の漂い続けるB級ゾンビ映画でした。昔の香港産ホラー映画に通ずる汚さのあるブラジル産ホラー映画です。
 ゾンビが汚いというより、登場人物や登場人物の生活している環境そのもの、あらゆるもの全てが泥臭く、毒々しく汚れて澱んでいる雰囲気の映画でした。
 殊に住民の貧困描写は拘りの域で、登場する家もバラック小屋めいた木造造りのボロ屋ばかりです。
 序に、画質も汚くてブレが多く、今一つ何が映ってるのか判別の付かないシーンも多かったです。
 夜のシーンは恐らく、昔の特撮でよく見掛けた、カメラのレンズにNDフィルターを取り付けて減光して、昼間に撮影しているけれど何となく夜っぽく見せているだけです。あからさまに夜間撮影で無いのが丸判りです。
 要するに、夜が全然夜っぽくなくて、ただ曇りの日に露出不足で撮影した動画の様な、画面が暗くて見難いだけの画質が延々と続くチープな映画です。
 まあ低予算のB級映画なので、個人的にはそういうのも充分にありですが。
 その割に、何故か映画の尺だけは無駄に長く、上映時間はなんと105分もあります。途中で結構ダレます。80分くらいで纏めればもっとテンポのいい作品になったと思うので、そこは編集でもうちょっとなんとかして欲しかったです。
 助長な部分が多いのが、かなり残念かな。 

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簡単にあらすじとネタバレ

 今回鑑賞したのは、昔にGYAO!(ギャオ)で放映されていたのを録画した、日本語字幕版です。
 GYAO!は、この手のホラー映画を大量に無料で視聴出来たので、サービスが終了してしまったのが残念で仕方ありません。

映画の舞台が何処なのかの参考にしました。

https://www.imdb.com/title/tt1329396/

映画の前半部

 ブラジルのエスピリトサント州という辺鄙な場所にある貧しいコミュニティは、地元の熱帯マングローヴ林で魚を釣ったり、甲殻類や貝を採ったりして、かろうじて生計を立てています。
 彼らの僅かな生存の糧は、水質汚染による食料源の消失によって徐々に脅かされ始めていました。
 濁った川からは魚が姿を消し、ヘドロの様な湿地帯を掘っても生きた貝が見付かりません。

 物語は、シニア世代の男性アジェノールが友人とカヌーで魚を釣りに行くシーンから始まります。呼ばないので友人の名前は判りません。
 釣りに行くと言っても娯楽ではありません。生きるのに必要な食料を確保する為です。

 そして、ヒロインに相当するのだろう女性ハケルの兄である、バチスタがマングローヴ林でカニを捕まえているシーンに移ります
 バチスタは、カニを追い掛けて、泥に塗れた腐乱死体を発見してしまい、びっくりしてマングローヴの根の上に転びます。

 ハケルの家にアントニオという男がカニを買いに訪れます。家の中では汚れきった服を着た車椅子の男性(ハケルの父親、以後は父)が、生牡蠣の身に檸檬の汁を絞って掛けて食べています。
 水質汚染の酷い場所に棲む生物を日常的に摂取しているからなのか、父の肌は醜く病的に爛れていて不気味です。
 隣の部屋では、目の見えないハケルの母親アルバが寝ています。母の肌も父と同じ様に爛れています。
 アントニオが「カニは?」と訊くと父は「バチスタが採りに行っているが未だ帰ってない」と答えます。アントニオはハケル家でバチスタの帰りを待つ事になりました。

 ハケルに恋心を抱く青年ルイス。彼は、食料にする貝を、マングローヴ林のヘドロ溜にしか見えない泥地で掘っていましたが、掘っても出てくるのは貝殻だけでめぼしい収穫は無く、坊主で家に帰って父親(?)に役立たずと罵られていた。
 そこに顔に切り傷を作り、血塗れ状態のバチスタが現れ助けを求めました。ルイスとその父親(以後ルイス父)は、バチスタを屋内に運び入れ事情を尋ねました。
 バチスタは、カニを採っていて幽霊にやられたみたいな事を話します。死体が歩いていたと。
 ルイス父はその話を一笑に付して信じず、しかし集めたカニはどうしたと訊くと、バチスタが置いてきたと答えたので、それを自分が頂こうと、ルイスにバチスタの看病を押し付け、自分は独りでマングローヴ林に向かいました。

 ルイス父がマングローヴ林に付くと、バタリアンっぽいデザインのゾンビが突然、今までこんなに沢山一体何処に潜んで居たの? と不思議に思うくらい大量に出現し、ルイス父は襲われ犠牲になる。

 ハケル家では、バチスタの帰りが遅いので、父が何処かで油を売っているだろうから探して連れ帰れ、とハケルに命じる。ハケルは応じて外へ探しに出掛ける。

 ルイス家では、焼いたレモンを傷痕に押し付けて治療するという謎の民間療法で、ルイスがバチスタを治療していた。
 因みにこの、焼いたレモン押し付け療法は、ロドリゴ・アラガォン監督作品に頻繁に登場する。もしかしたら、ブラジルではかなりメジャーな民間療法なのか?
 ルイスの懸命な非科学的な治療も虚しく、バチスタは死亡した。そして直ぐに、ゾンビになって動き出しルイスを襲った。
 ルイスは家にあった猟銃でバチスタを撃ち抜き、何とか再殺した。すると、銃声を聞いたハケルが家に飛び込んで来た。
 ルイスは状況を説明しようとするが、ハケルは、「よくも兄を殺したな」と聞く耳持たず、ルイスを角材で殴った。そこに沼からやって来たゾンビが登場し、ハケルを襲い腕に噛み付いた。
 そのゾンビをルイスが猟銃で撃ち抜き、ハケルを護った。ルイスがバチスタを殺したのはゾンビ化したからだと誤解が解け、ハケルはルイスに殴った事を謝る。

 ハケル家では、父が生牡蠣を食べていた。アントニオはそれを眺めていた。生牡蠣を飲み込んた父が、牡蠣を喉に詰まらせて苦しみだした。
 アントニオは、父を助けてやろうと、口腔内を覗くと、喉に詰まっている牡蠣を見付けて取り出してやろうとする。
 アントニオが父の口腔内に指を突っ込んで牡蠣を摘むと、父がアントニオの指を噛み千切った。
 怒ったアントニオは、ポケットに忍ばせていた拳銃で父を撃ち殺した。
 その後、テーブルの下から奇妙な音がして、何か生物の蠢く気配を感じ、アントニオはその正体を確認する為、父の足元に置かれていた小樽を覗き込んだ。
 小樽の中では大量の牡蠣が不気味に蠢いており、アントニオに襲い掛かった。

 その頃、友人と釣りをしていたアジェノールは、大物を釣り上げた。しかし、鯰っぽい魚と一緒に腐乱死体も引き上げてしまう。
 この死体が行き成り動き出し、アジェノールの友人が驚いて川に落下する。友人は泳いでカヌーに戻ろうとするが、あと一歩という時点で水中に沈んだ。
 アジェノールは、起き上がろとするゾンビを何とかしようとオールで叩いた。叩き捲った。
 すると、何故か友人がゾンビ化して突然水中から出現して、カヌーを転倒させた。アジェノールも水中に落ちた。
 アジェノールはゾンビ化した友人から必死に逃げ、底無しの泥沼に沈み込んでしまう。

 気付けば家の周りは腐敗ゾンビに囲まれており、ルイスとハケルは屋内に立て籠もります。そのまま夜になり、このまま朝まで粘ろうと考えていたら、家の壁をぶち破ってゾンビが襲って来たので2人は逃げ出しました。
 ゾンビを振り切り、森の中を彷徨い、木陰で息を潜めるも、次第に噛まれたハケルの体調が悪化して来たので、ルイサはハケルを何とかして治療しなければと焦ります。

映画の後半部

 ルイスは、ハケルを何とか助けようと、村の呪術医であるベネディータ婆さんの家を訪ねます。
 ベネディータは、水質汚染の影響なのか肌が爛れていましたが、心優しい不思議な婆さんです。ハケルを助ける知恵をルイスに授けます。
 第一に焼いたレモンを候補に挙げますが、これではバチスタのゾンビ化を防げなかったとルイスが答えます。
 焼いたレモンが駄目なら第二の方法として、河豚の毒を使ってハケルを一度殺して蘇生させる事で、悪い物を死後の世界に置き去りにし、ゾンビの毒を無効化してハケルを健康な状態に戻せるかも知れないと言いました。

 ルイスは、ベネディータの死んだ夫が生前に使っていたという投網を借受け、真夜中に河豚を捕まえに行く事になりました。
 道中の途中で、泥沼に嵌って出られなくなっていたけれど、未だ存命していたアジェノールを見付け、引っ張り上げて助けます。
 助けられたアジェノールは、ルイスに礼を言って事情を聞くと、昔に河豚の養殖場だった場所に案内し、慣れた手付きでルイスの代わりに投網で河豚を捕まえます。

 採れた河豚を持って二人はベネディータ婆さんの下に帰ります。アジェノールとベネディータが挨拶を交わし、その後ベネディータ婆さんは、河豚から肝を取り出してハケルに与えます。
 ハケルは一度死に、そして無事に健康になって蘇りました。ハケルは、ベネディータ婆さんに礼を言います。
 その後、ルイスとアジェノールは山を越えて安全な土地に逃げようと提案しますが、ハケルは、家に父と母を助けに戻ると言い出します。
 結局、ルイスはハケルに着いて行く事になりました。アジェノールは、ベネディータ婆さんから亡き夫の形見のマチェットを与えられて一人で逃げる事を選択しました。ベネディータ婆さんはずっと暮らしていたこの家に留まると言いました。
 四人は、其々他の人間の無事を祈り別れました。

 ルイスとハケルがルイス家に着くと真っ暗なのでランプに点火して家の中を見渡すと、父が死んでいました。そして、ゾンビ化したアントニオが襲って来たので、ルイスがその頭を斧で叩き割って何とか撃退します。
 しかし、そう思ったのも束の間で、頭を割られたアントニオは再び立ち上がって襲い掛かって来ます。更に、死んでいた父までゾンビ化して動き出し襲いかかって来ました。
 頭の割れたアントニオの中からは赤黒いドロドロした粘液が流れ出します。赤い大きな舌の様な物が蠢きます。父ゾンビの口からも赤い大きな舌の様な物が伸び出して来て、ハケルの顔をレロレロレロレロ舐め回します。
 血なのか汚液なのかよく判らない体液に塗れになりながらも、ルイスは頑張って、斧で滅多打ちにして2体のゾンビを肉片に変え、行動不能の状態まで追い込み再殺しました。

 隣の部屋では、ハケルの母アルバが未だ生き延びていました。
 ハケルの声を聞くと盲目のアルバは、口の中に牡蠣が入って来た夢を観たと語りました、そして、不思議な事に夢なのに口の中には未だ、牡蠣の味が残っていると言いました。そして、母の枕元には牡蠣の貝殻が……。
 ああ、何と言う事でしょう。水質汚染の影響で突然変異を起こして悍ましい異形と化した牡蠣は、貝殻を捨てて蛭の様に自力で這いずり、アルバの口からその体内に侵入していたのです。
 アルバの口から赤く極太の舌の様な物が飛び出して、ハケルの顔面を狙います。ハケルが手で払うと、それは吹き飛んで床に転がりました。そのまま、原型を留めない程に別の生き物と化した牡蠣の中身改は、蛭めいて床の上を這いずります。その後、今度はアルバがゾンビ化してハケルに襲い掛かりました。
 気を失うハケル。ルイスは斧で殴ってハケルを救出します。

 その後、ランプの火が家に燃え移り火事になります。ルイスは家の中にあったラム酒の樽に火を付けると、ゾンビが徘徊する家の外に放り投げて爆発させます。その周囲一帯のゾンビを吹き飛ばして、ハケルと一緒に家から脱出します。

 ルイスとハケルは山の上に逃げて行きます。そして、この断崖絶壁に近い岩を登れば助かるという時点で、大量のゾンビに囲まれ、万事休すという状態になりました。
 その時、崖の上からマチェットを片手に持ったアジェノールが岩の上から飛び降りて来て、ゾンビを切り捲りました。「ルイス登れ!」アジェノールの助言に従いルイスとハケルは岩を登り助かります。
 しかし、助けに来たアジェノールは……。かなりの数のゾンビを倒しましたが、多勢に無勢です。最終的にはゾンビに囲まれ、命を落としてしまいました。

 山頂に逃げ延びたルイスとハケル。長い夜が終わり、夜明けが訪れます。明るくなり始めた山頂から見える彼方には、汚染された海らしき景色が広がっていました。ルイスはハケルに「ずっと好きだった」と告白します。物語は終わります。

2008年制作なのに80年代ホラーの雰囲気(褒め言葉)

 80年代に多く作られた、CGではなく特殊メイクと特殊効果、どうしようも無い泥臭く汚らしいだけのホラー映画が好きな人なら、きっと楽しめる事が間違い無い映画だと思います。
 最初の導入部が長すぎで、尺をもう少し詰められなかったのかと思いますが、概ね面白かったです。
 死体がゾンビ化する理屈が今一つ判らないし、そのまでただの食料だったのに、あの突然変異して人間を襲い出した牡蠣は何だったのかとか、舞台は小さなコミニュティーなのにどんだけゾンビ出てくるのとか、設定に突っ込み処しかありませんが、B級ホラーならこんなもんでしょう。
 ストーリーもあってないようなものですが、B級ホラーならこんなもんでしょう。

 水質汚染からゾンビ発生というパターンは、ロドリゴ・アラガォン監督の次の映画「シー・オブ・ザ・デッド」に繋がります。関連性としては、一応舞台(何かに汚染された海)繋がりなんでしょうか?
 ロドリゴ・アラガォン監督作品で他にも繋がりがありそうなのは、「吸血怪獣 チュパカブラ」、「サタニック・ビースト 禁断の黒魔術」、「永遠の墓(←直訳、日本未公開 原題:O Cemitério das Almas Perdidas)」と幾つか候補が並びます。「永遠の墓」はYoutubeで公開されていたので、言語がスペイン語なのは辛いですが、今度どんなものか見てみようかなと思います。

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