鉛電池でポータブル電源自作 非常時や災害時 車中泊避難に備えて 防災やキャンプに

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DIYと自作

 災害や非常時、あるいは長距離移動中の車中泊避難に備えて、常に「もしも」の電源を持っておきたい──そう考えたことはありませんか?
 停電時にスマホや照明、小型家電など、最低限の電力が確保できるだけで、安心感はまったく違ってきます。
 また、アウトドアやキャンプでも、ちょっとした電源があると非常に便利ですよね。

 市販のポータブル電源もいろいろありますが──正直なところ、ただのロマンかもしれませんが、こういうガジェットって「自分で作ってみたい」という気持ちが湧いてきませんか?
 そのこだわりからか、私は自分で作れるものは自作してみたくて仕方がありません。
 きっと、同じように感じる人も少なくないはずです。

 今回は創作意欲を満たすために、12V9Ahの鉛電池(シールドバッテリー)を使って、小型ポータブル電源を自作してみました。
 コンセプトは、車に常備して走行中にシガーソケットから充電しつつ、満充電を維持するというもの。

 作り方はとてもシンプルで、市販のパーツとちょっとした工具があればOK。
 もちろん、完成度は市販品には敵いませんし、極端にコストを抑えられるわけでもありません。
 でも、こういうものは「作る過程」を楽しむのが一番。
 たとえ少し不格好でも、自分で作ったものには不思議と愛着が湧きますし、仕様を自分好みにカスタマイズできるのも大きな魅力です。

 普段は車内に載せっぱなし、いざという時にはすぐ使える頼もしいポータブル電源。
 正直くだらない工作記事ですが、読んで少しでも興味が湧いたら、あなたも自作に挑戦してみて下さい。


車内に放置する前提の12V携帯電源(ポータブルバッテリー)の材料

 まずは、用意した材料の紹介から始めます。


材料その1 バッテリー

 携帯電源でいちばん重要なのは、当然ですがバッテリーです。
 今回は、Kung Long製の12V9Ah密閉型鉛蓄電池(シールドバッテリー)を購入しました。
 これを車のシガーソケットにつないだまま車内に放置し、何かしらの非常事態に遭った時に使用するための電源とすることにします。

 キャンプ用のバッテリー式ポータブル電源も普通に市販されていますが、私の場合は「冬場に緊急避難的に車中泊しなければならない」といった事態を想定している程度なので、そこまで本格的な製品は必要ありません。
 USBベストや電気毛布が使えれば十分助かる──そんなイメージです。
1 2V9Ah程度の電力容量があればおそらく事足りるだろうと考え、今回は自作で済ませることにしました。

 Kung Longのシールドバッテリーの時間率容量は「20時間率」(つまり9Ah ÷ 20h = 0.45Aで、0.45Aを20時間連続で取り出せるという意味)です。
 電力量に換算すると約108Whになります。
 一般的なモバイルバッテリーの電圧3.7Vに換算すると、およそ29,000mAh相当の容量です。


 さて、いまやリン酸鉄リチウムイオン電池やリチウムイオン電池が主流になりつつある時代に、なぜあえて鉛電池を使うのか?
 その理由は、鉛電池は常に満充電状態を維持する必要はあるものの、充放電の電圧管理が比較的ざっくりでも何とかなるからです。

 たとえば充電停止電圧を13.8V程度に設定し、車の走行中にずっと充電するようにしておけば、特に気を使わなくてもOK。
 車内に放置しっぱなしでも、鉛電池ならベストなコンディションを保てます。
 また、夏場の暑い車内に置いておいても、リチウムイオン電池のように爆発するリスクが低いので、ズボラな人間にとっては非常にありがたい仕様です。


 さらに、リン酸鉄リチウムイオン電池やリチウムイオン電池だと、劣化・故障した際の処分に困る問題もありますが、鉛電池なら心配無用です。
 オートバックスに持ち込めば無料で引き取ってもらえる(電話で確認済み)ことが分かりました。
 このため、「買うなら鉛電池だな」となったわけです。

 もちろん、リチウム系バッテリーでも、外装を分解して中身のセルだけにすれば電池ごみとして捨てられますが──まあ、そこまで手間をかけたくないですよね。


材料その2 過充過放電の監視モジュール

 鉛電池の電圧監視についてですが、Amazonなどで安く買えるソーラーパネル用の充放電コントローラーを利用すれば、電圧監視回路を一から自作する必要はありません。
 おかげで、携帯電源の製作自体はとても簡単になりました。

 良い時代になったものです。
 USBポートが2口付いていて、バッテリーの過充電・過放電を監視してくれる完成品のコントローラーが、通販で1000円ちょっとで買えてしまうのですから驚きです。
 ソーラーパネルコントローラーの詳細については、以下の記事をご覧ください。

 ちなみに、海外通販に抵抗がなければ、AliExpressなら同じ製品が500円程度で手に入ります。


材料その3 充電用の電源

 車で充電するために、シガーソケット→DCジャック変換ケーブルが必要だったので購入しました。
 100均のシガーソケット電源を買ってきて外側だけ流用するのも手でしたが、作業が面倒くさかったので素直に市販品を購入。
 完成品の方が見た目もきれいですし、まあ許容範囲の出費です。

 また、家庭用コンセントから充電するために、AC-DC変換アダプター(12V3A)も購入しました。
 最初はAliExpressで安いものを買ったのですが、粗悪品が届き、3A仕様なのに
1.5Aしか出ない
という状態。AliExpressで買い物をすると、こういうトラブルがちょくちょく起こります。
 返品後、改めてAmazonでまともな製品を買い直しました。

 さらに、長期の車中泊避難に備えて、太陽電池パネルもあると安心です。
 とはいえ、昔秋月電子通商で購入した12Wの太陽電池パネルが未使用で2枚家にあったので、今回は新たに購入しませんでした。
 もし新しく買うなら、Amazonで12V20Wの防水仕様パネルが2000円程度で売られているので、それを選ぶのもアリかなと思っています。安いですしね。


材料その4 DC-DC昇圧モジュール

 ソーラーパネルコントローラーを介してバッテリーを充電する場合、入力電圧は最大21Vまで対応しているそうです。
 そのため、車やAC-DCアダプターの出力電圧を、DC-DC昇圧モジュールで一旦16Vくらいまで上げる予定で、モジュールを購入しました。

 車のシガーソケットからなら14V前後の電圧が取れるので問題ありませんが、AC-DCアダプターは12V出力なので、そのままでは鉛電池を満充電できません。
 このため、どうしてもDC-DC昇圧モジュールが必要になります。

 今回購入したモジュールは、昇圧時の電圧設定だけでなく定電流出力にも対応しているタイプです。
 充電時の電流を1A程度に固定して使うつもりです。

 初期不良が怖かったので、安心返品保証のAmazon発送品を選びました。


材料その5 シガーソケットのメス

 自作電源には12V出力も欲しいので、シガーソケットのメスも購入しました。
 これで、小電力しか必要としないカー用品なら問題なく使えます。

 使わないときは閉じておける蓋付きタイプです。


材料その6 ケース

 鉛電池をはじめ、その他一式を収納するためのケースも必要です。
 このあたりは、100均ダイソーでちょうど良さそうなサイズのものを探して購入しました。

 本体として使用する手提げカゴと、蓋として利用する別のケースの2点を組み合わせて使う予定です。


ポータブル電源を組み立てる

 入れ物として使うのは、100均ダイソーで購入した手提げカゴ
 これに各パーツを収め、ポータブル電源として使いやすいように組み立てていきます。


DC-DC昇圧モジュールの電圧と電流を調整する

 まず、12VのAC-DCアダプターを繋ぎ、DC-DC昇圧モジュールの出力電圧を16Vに設定。
 さらに、約1A流れるように、2個あるボリュームつまみを回して調整します。

 開放状態(無負荷)で電圧を合わせても、負荷をかけると電圧が下がるため、実際にダミー負荷を繋いだ状態で調整しました。
 こういう場面に備え、私は100Wクラスのメタルクラッド抵抗(1Ω~10Ωまで1Ω刻み、各1本)を常備しています。
 今回は、10Ωと2Ωを直列にして12Ωの負荷を作り、それをDC-DC昇圧モジュールに接続して調整しました。

 私はシンプルにメタルクラッド抵抗を使いましたが、セメント抵抗でもいいですし、もっとスマートに電子負荷を使って調整してもOKです。


 電圧16Vに12Ωの抵抗を繋ぐと、理論上は約1.33A流れるはずですが、昇圧モジュールの定電流出力機能のおかげで、うまく約1Aに抑え込めました。
 バッテリー充電用としては、これくらいで十分でしょう。


 ちなみにこのDC-DC昇圧モジュール、説明書が付属していなかったので使い方に悩みましたが、かなり優秀です。
 最大400W出力を目指す場合は冷却ファンが必要になりそうですが、今回のように16W程度の出力ならファンレスでもヒートシンクがほとんど熱を持ちませんでした。


 なお、入力側のAC-DCアダプターは36W仕様なので、その気になれば16V・1.7A(約27W)くらいまでは流せる計算です。


 このモジュールの惜しい点を挙げるなら、
「パイロットLED(通電確認用LED)が最初から付いていない」こと。
 できれば最初から基板上にSMD部品で用意しておいてほしかったところです。
 どうしても欲しければ自分で追加するしかありませんが、面倒なので今回はスルーしました。


あとは組み立てるだけ

 ポリプロピレン製のカゴの底に、これまたダイソー製のポリプロピレンシートを敷き、
 さらにステンレス線を溶着して、バッテリー固定用のフックを作成しました。

 ここに結束バンドを通して、バッテリーをしっかり固定します。


 蓋として利用するケースの方は、底側に穴を開け、
 シガーソケットソーラーパネルコントローラーを取り付け、固定しました。


 配線には、最大電流値16A、常用8A程度まで耐えるAWG18電線を使用。
 端子部分は平端子を使い、圧着+はんだ流しでしっかり取り付けています。


完成したポータブル電源のチェック

 下の画像のように、バッテリーDC-DC昇圧モジュールをケースの底に固定し、用意した配線で接続しました。
(取り回しはちょっと雑ですが、問題なく機能しています)


 上蓋を被せると、下の画像のような状態になります。
 バッテリーソーラーパネルコントローラーを接続すると、コントローラーのディスプレイには常にバッテリー電圧が表示され続ける仕様のようです。
 ソーラーパネルコントローラーの上に見えるのが、12V出力用のシガーソケットです。


 通電確認のため、シガーソケットに電圧計を挿してみると、12.7Vが表示されました。
特に問題はなさそうです。

 ただし、ソーラーパネルコントローラー側のバッテリー電圧表示は13Vになっており、0.3Vの差があります。
 どちらかの表示が少し狂っているか、あるいはシガーソケットまでの配線抵抗による電圧降下か──正確な原因は特定していませんが、おそらくそのどちらか、あるいは両方が影響していると考えています。

 とはいえ、電圧表示は目安程度に考えておけば、特に問題はないでしょう。


 次に、ソーラーパネルコントローラーのUSB出力端子にテスターを接続して電圧を測定。
 画像のとおり、しっかり5Vが出力されていました。
 USB電源部分も正常に動作していることが確認できました。


 さらに、ACアダプターを接続して給電テストを実施。
 下の画像のように、ソーラーパネル入力が認識され、バッテリーへの充電が開始されました。

 ACアダプターの出力電圧は12Vですが、事前の計画通り、DC-DC昇圧モジュールで16Vに昇圧され、問題なくバッテリーへ給電されています。

 流れる電流も最大1Aに設定しておいたため、
 アダプターもDC-DC昇圧モジュールも、特に激しく発熱する様子はありませんでした。


作って満足ポータブル電源

 まあまあ思い通りの形に仕上がり、個人的には大満足のポータブル電源が完成しました。
 早速、車に積み込んでおきました。

 市販品と比べると見た目も性能も正直ショボいかもしれませんが、やはり手作りならではの愛着ってのがあります。
 これで、もしもの時にも電源を確保できるので、一安心です。
 天災はいつ襲ってくるかわかりませんから、備えあれば憂いなしですね。

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