VRAM12GB以上のグラボが欲しい
ローカル環境で人工知能(AI)アプリケーションを動かすためのグラフィックボード(GPU)を、新しく購入しました。
これまで私が使っていたのは、VRAM 6GBの NVIDIA RTX A2000。
軽量なモデル「Fooocus-MRE」ならこのスペックでも十分動作してくれるので、ローカルでのAIイラスト生成にはそれなりに重宝していました。
とはいえ、最近はVRAM12GB以上が必要と言われるStable Diffusionなど、より本格的なイラスト生成AIにも挑戦したくなってきました。
加えて、大規模言語モデル(LLM)にも興味があり、「そろそろもっとVRAM容量の大きいGPUが欲しいな」と思い始めたのがきっかけです。
とはいえ昔から、電力をバカ食いする補助電源付きGPUにはどうしても抵抗がありました。
私の住まいは築古物件で、配電盤の容量も少なめ。他の家電と併用していると、ちょっと油断しただけでブレーカーが落ちそうになるんです。
さらに、中古のワークステーションにも組み込めるのが理想という事情もあり、大きなグラボはサイズ・電源・ケーブルの面で物理的に厳しいという現実があります。
そんなわけで、私が選ぶGPUの条件は「補助電源不要&省電力」一択になります。
ただ、その条件を満たしつつ、VRAM容量が大きくて、性能もそこそこあるGPUとなると、選択肢はかなり絞られます。
中でも理想的なのが、VRAM 20GBを搭載した「RTX 4000 SFF Ada」。
補助電源不要でLow Profile対応、性能も抜群。まさに「欲しい条件が全部そろった理想のGPU」です。
……が、価格は最安でも約20万円。
さらに問題なのは、安価に売っているショップの多くが在庫を持っていないということ。
「注文が入ってから、メーカーに発注 → 生産 → ユーザーに直送」という流れなので、納期はかなり読めません。
そもそもこのGPU、一般のホビー用途ではあまり使われない、業務用に近い少々特殊な製品です。
メーカーも基本的に在庫を抱えておらず、完全な「受注生産スタイル」。
そのため、手元に届くまでに数ヶ月待たされるのも珍しくないのが現実です。
私も本音では「RTX 4000 SFF Ada」が欲しくてたまらなかったのですが、予算面と納期の問題から、今回は泣く泣く断念しました。
そこで今回選んだのが、RTX A2000の後継機種とも言える「RTX 2000 Ada(VRAM 16GB)」。
価格は最安でも約11万円とやや張りますが、補助電源不要・Low Profile仕様という条件を満たしながら、性能はしっかり向上しています。
この「RTX 2000 Ada」は、補助電源なしのGPUの中では、RTX 4000 SFF Adaに次ぐ性能を持つモデル。
私のように「補助電源なしじゃないとイヤ!」というこだわりがあって、中古ワークステーションにグラボを積んでAIを活用したいという人にとっては、非常にバランスの良い選択肢だと思っています。



Quadro系のグラボは外箱が大きく豪華だが中身はスカスカ
RTX 4000 SFF Ada・RTX A2000・RTX 2000 Ada 仕様比較表
項目 | RTX 4000 SFF Ada | RTX A2000 | RTX 2000 Ada |
---|---|---|---|
GPUアーキテクチャ | Ada Lovelace | Ampere | Ada Lovelace |
GPU | AD104 | GA106 | AD107 |
プロセス | 5 nm | 8 nm | 5 nm |
トランジスタ数 | 358億 | 120億 | 189億 |
CUDAコア数 | 6,144基 | 3,328基 | 2,816基 |
RTコア数 | 第3世代 48基 | 第2世代 26基 | 第3世代 22基 |
Tensorコア数 | 第4世代 192基 | 第3世代 104基 | 第4世代 88基 |
メモリ容量 | 20GB GDDR6 ECC対応 | 6 GB / 12 GB GDDR6 ECC対応 | 16GB GDDR6 ECC対応 |
メモリバス幅 | 160-bit | 192-bit | 128-bit |
バンド幅 | 280GB/s | 288 GB/s | 224 GB/s |
ベースクロック | 720 MHz | 562MHz | 1620MHz |
ブーストクロック | 1560 MHz | 1200MHz | 2130MHz |
単精度性能 | 約19.2 TFLOPS | 約8.0 TFLOPS | 約10.3 TFLOPS |
TDP(消費電力) | 70W | 70W | 70W |
接続バス | PCI Express 4.0 x16 | PCI Express 4.0 x16 | PCI Express 4.0 x8 |
補助電源 | 不要 | 不要 | 不要 |
フォームファクタ | SFF(ロープロ+デュアルスロット) | SFF(ロープロ+デュアルスロット) | SFF(ロープロ+デュアルスロット) |
ディスプレイ出力 | 4×mini DisplayPort 1.4a | 4×mini DisplayPort 1.4 | 4×mini DisplayPort 1.4a |
NVENC / NVDEC | 第8世代 / 第5世代 | 第7世代 / 第4世代 | 第8世代 / 第5世代 |
簡単なまとめ
- RTX 4000 SFF Ada:性能・メモリ容量・最新機能ともに最もハイスペック。省電力ながら本格的なワークステーション用途にも対応。
- RTX A2000:旧世代Ampereながらコストパフォーマンス重視の設計。小型PC向けに最適。
- RTX 2000 Ada:RTX A2000の後継的ポジションで、最新アーキテクチャとECCメモリ搭載が特徴。ミドルレンジの選択肢として優秀。



とはいえ、補助電源付きでもコスパ重視なら、RTX 3060(12GB) や RTX 4060 Ti(16GB) といった選択肢も十分魅力的です。
実際、AIイラスト用途ではこの2つが非常に人気で、「補助電源アリでもOK」なら選ぶ価値のあるGPUたちです。
では、価格や性能、消費電力などを比較した場合、RTX 2000 Adaはどのような立ち位置になるのか?
次のパートでは、RTX 3060(12GB版)・RTX 4060 Ti(16GB版)との比較を通じて、私がなぜ最終的にRTX 2000 Adaを選んだのか、その理由を詳しく紹介していきます。
AIイラスト生成 補助電源なしRTX 2000 Adaを選んだ理由と、RTX 3060・4060 Tiとの比較
AIイラストを生成する「Stable Diffusion」用のグラボとしては、価格の割にVRAM容量が大きい
RTX 3060(12GB) や RTX 4060 Ti(16GB) が人気ですね。
特にRTX 3060(12GB)は、実際にイラストを生成している様子を撮影した動画がYouTubeにも多く上がっており、入門用として注目されています。
発売当時のRTX 3060(12GB)は、「VRAM12GBなんて過剰すぎる」という声もありましたが、AIブームとともに評価が一変。現在ではAI用途での“定番グラボ”として不動の人気を誇っています。
その後継モデルにあたるRTX 4060は8GB版しか出なかったため、AI目的であれば「3060のほうが優秀」とさえ言われています。
新品が4万円台で購入でき、AIイラスト生成にも十分な性能。
コストパフォーマンスだけで見ればRTX 3060は圧倒的に優秀です。
でも、そんな中、私があえて選んだのが――「RTX 2000 Ada」。
理由はズバリ、補助電源が不要だからです!
この記事では、
- なぜ「補助電源なし」にこだわったのか
- RTX 3060 / 4060 Ti と RTX 2000 Ada の性能と価格の比較
- それぞれの長所と短所
をまとめつつ、「自分に合うGPU選び」の参考になるような視点をお届けします!
なぜ補助電源なしが決め手だったのか?
私がAI用途に使っているPCは、2台あります。
1台目は、通称「まな板」スタイルの自作機。700W電源に、TDPを35Wに制限したIntel Core i5-12600K(T仕様)を載せた省電力マシンです。
2台目は、Xeon E5 v4時代の中古ワークステーション。こちらは電源容量こそ800Wありますが、CPUを2基搭載しているため、すでにかなりの電力を消費しています。
さらに、ケースサイズにも制限があるため、使えるグラボには高さ制限があります。
RTX 3060や4060 Tiのコスパには惹かれます。
ですが、どちらも補助電源(8ピン)必須。正直、「そんなものを挿さなきゃ動かないグラボ」という時点で、私にはナシです。
電源ユニット的にはまだ余裕があるものの、家の配電盤の容量が小さいため、電力の使いすぎはブレーカー落ちのリスクが高まります。
さらに、補助電源を使うとケーブルの取り回しやケース内の空間確保も面倒になります。
そんな中で選んだのが「RTX 2000 Ada」
- TDP 70Wで補助電源不要
- Low Profile対応で小型PCにもすっぽり収まる
この2点が、私にとっては“購入の決め手”でした。
注意点:ファン音はうるさいかも?
ただし、静音性を重視する方には注意点があります。
RTX 2000 Adaのファンは、高負荷時(回転速度90%以上)にかなりうるさいです。
以前使っていたRTX A2000と同様、小径ファンのため音の周波数が高く、耳障りに感じることも。
静かに使いたいなら、MSI Afterburnerなどでパワーリミットを70%前後に設定するのがおすすめです。
この設定でもパフォーマンスはほとんど落ちず、消費電力と発熱を効率的に抑えることができます。
まとめると…
条件 | RTX 2000 Ada |
---|---|
補助電源不要 | ✅ Yes |
小型ケースOK(Low Profile) | ✅ Yes |
高負荷時ファン音 | ❌ ちょっとうるさい |
スペック比較:RTX 3060 vs 4060 Ti vs RTX 2000 Ada
項目 | RTX 3060 12GB | RTX 4060 Ti 16GB | RTX 2000 Ada 16GB |
---|---|---|---|
GPUアーキテクチャ | Ampere | Ada Lovelace | Ada Lovelace |
CUDAコア数 | 3584 | 4352 | 2816 |
VRAM容量 | 12GB GDDR6 | 16GB GDDR6 | 16GB GDDR6 |
メモリバス幅 | 192-bit | 128-bit | 128-bit |
補助電源 | 必要(8ピン) | 必要(8ピン) | 不要 |
TDP(消費電力) | 170W | 165W | 70W |
フォームファクタ | 標準サイズ | 標準サイズ | Low Profile対応 |
定格性能(FP32) | 約12.7 TFLOPS | 約22 TFLOPS | 約10.2 TFLOPS |
実売価格(2025年春) | 最安約4.5万円 | 最安約8万円 | 最安約11万円 |
AI用途の評価 | ◎ コスパ良好 | ◎ 高性能 | ◎ 省電力&省スペース向け |


補足と比較のポイント
RTX 3060
今もAIイラスト勢の入門定番GPU。VRAM 12GBでコスパ◎。ただし補助電源が必須で、筐体サイズにも注意。※8GB版もあるので、購入時は間違えないように!
RTX 4060 Ti
性能は大きく向上していますが、メモリバス幅が128bitに削減された影響で、AI用途では意外と体感できる差が出にくい場面も(特にStable Diffusion系)。※8GB版もあるので要注意。
RTX 2000 Ada
補助電源不要&Low Profile対応で、しかもVRAM16GBという独自性が最大の魅力。省スペース・省電力・静音性を重視する人にはベストな選択肢。
性能と価格の一長一短
✅ RTX 3060(12GB)
メリット: メモリ12GBでコスパ良好。AIイラスト生成にも必要十分。
デメリット: 補助電源が必須。消費電力や発熱も高め。そろそろ生産終了の噂もあり、新品在庫がいつまであるか不透明。
✅ RTX 4060 Ti(16GB)
メリット: DLSS 3対応で処理速度は最速クラス。
デメリット: 価格が高めで、2025年に入ってから特に値上がり傾向。PCIe x8接続のため、一部用途では帯域がネックになることも。現時点でお値打ちに買えるのは、ドスパラ限定の「Palit GeForce RTX 4060 Ti JetStream」あたり。
✅ RTX 2000 Ada
メリット: 補助電源不要、静音・省電力、小型PCにも対応。ECCメモリ搭載で安定性も◎。
デメリット: CUDAコアやメモリ帯域は控えめ。RTX A2000はPCIe x16だったが、こちらはx8接続。GPUはRTX 4060と同じだが、性能は実質RTX 3060と同程度。その割に価格はプロ向け仕様でやや高め。
結論:自分の「環境」や「優先順位」で選ぶのが正解!
私のように、
- 補助電源のケーブル取り回しをしたくない
- 省スペース重視
- 長時間の安定稼働が欲しい
という人には、RTX 2000 Adaは非常に快適な選択肢です。
一方で、
- コスパ最優先なら RTX 3060
- 最新技術と高速性を求めるなら RTX 4060 Ti
が選ばれるのも納得。

グラボ選びは最終的に本人次第で変わる
以上、補助電源なしでローカルAIを動かしたいというこだわりから、私が「RTX 2000 Ada」を選んだ理由と、RTX 3060・RTX 4060 Tiとの比較をお伝えしました。
AI用途でグラボを選ぶ際は、単に性能や価格だけでなく、電力消費・サイズ・設置環境なども含めた「自分の使い方」に合った選択がとても大切だと実感しています。
RTX 3060や4060 Tiのようにコスパ重視の選択肢もあれば、私のように「補助電源ナシ・省電力」にこだわってRTX 2000 Adaを選ぶという判断もアリ。
ローカルでAIイラストを楽しみたい方、LLMを試してみたい方、自作PCや格安で安定性の高い中古ワークステーションを活用したい方など、それぞれに「ちょうどいいGPU」は違って当然です。
この記事が、あなたにとって最適なグラボ選びの参考になれば嬉しいです!