これまでの“ぬるいキノコ系ホラー”では満足できない。刺激的なキノコ寄生ホラーを求めていたあなたへ。
絶対数の少ないニッチなジャンルの中で期待の“ちゃんと作られた一本”が初登場。
この作品は、生理的嫌悪感を刺激するビジュアル表現も頑張っています。
キノコ系ホラー映画のニューフェース『Gaia』2021 日本未公開
『Gaia』は2021年に公開されたアメリカのエコロジカルホラー映画で、監督はジャコ・バウアーが務めています。公式では“自然と人間の対峙”をテーマに掲げたホラー作品として紹介されているようですが、私としては掲げるテーマがちょっとズレているそうにしか思えません。
そもそも、寄生キノコの映画楽しみにしているファンは、エコロジーとか高尚なテーマはどうでもよく、求めているのはとにかく、不気味で生理的嫌悪を催すようなグロ、かつショッキングな映像です。
勝手な私見ですが、ホラー映画のテーマに環境破壊に対する警鐘を含めたりすると、非常につまらなくなるか、逆に制作者の意図に反した部分(トンデモ感)で面白くなったりするかのどっちかな気がします。
実はこれ、ありそうで余り無い貴重な人体寄生系キノコのホラー映画です。キノコを題材にしたホラー映画というのは絶対数が意外と少ないので、貴重な作品が一本、追加されたことになります。
たまたまその存在を知ったものの、日本ではまだ正式な上映やソフトが無く、今回は国内Amazonで販売されていた海外版DVDを入手し、英語音声と英語字幕で頑張って鑑賞しました。
当然、日本語字幕は無いため、正確かつ詳細な内容の理解には自信がありませんが、映像と雰囲気だけでもそこそこ楽しめる作品です。ただエキサイティングな展開の映画ではないので一部のシーンでは眠くはなりました。その所為ではありませんが(英語が苦手なだけです)、大雑把にしか内容を把握していません。
これまで、人間に寄生するようなキノコが登場しするホラー映画として、パッと思い浮かぶタイトルといえば、『マタンゴ(1963)』(どっちかと言えば怪獣映画の亜種)や『恐怖!キノコ男(2006)』(超低予算のホームムービー作品)くらいでしたが、今回「Gaia」が公開されたお陰で、それが合計3つに増えました。1.5倍です。
一応、「デス・トリップ(2007)」という映画も、テーマはキノコですが、こちらは毒キノコによる幻覚を題材にした低予算ホラー寄りの作品で、キノコそのものが寄生したり怪物化するタイプではありません。
グロテスクさや恐怖演出よりも、混乱状態の若者たちが右往左往するだけの作りで、個人的に求める怪奇要素はまったくありません。
その意味で『Gaia』は、久しぶりに登場した――否、純粋な“菌×恐怖”系の作品として映像的にもしっかり作られた唯一のまともなホラー映画と言えます。注目したい一本です。
『GAIA(2021)』はこんな作品

鬱蒼と茂る森を舞台にした作品ですが、雰囲気としては自然の多いキャンプ場のようにも感じました。
この作品を視聴した正直な感想として、ストーリーの「核心」と呼べるものがそもそも存在しているのか、私には判断できませんでした。
夢か現実か判別しづらい芸術的なイメージシーンが多く、監督が持っていたビジュアルの断片を重ねていった結果、こうなった――そんな印象です。
映像としては確かに美しく完成されていますが、何を伝えたかったのかは最後まで掴めませんでした。
1980年代ホラーでは許容された“奇妙で説明しない感覚”が、近年の映像が美しくなりすぎたホラーでは、かえって強い違和感として現れているように感じます。
もしかすると、この点が芸術的な感性を持つ天才と、私のような凡人との大きな差なのかもしれません。
とはいえ、私が寄生系キノコ映画に求めているのは「植物スカベンジャーが本領発揮した」気持ちの悪いグロテスク表現だけなので、総合的には満足です。そんな場面が楽しめればOKという人には刺さる映画だと思います。
著作権への配慮のため(不特性多数へのネタバレの自粛)、ネタバレありあらすじの詳細はnoteに移します。
『GAIA(2021)』視聴後の感想

菌類による寄生と変異をリアル寄りの描写で表現した、スピリチュアル×ボディホラー作品です。
胞子が漂う空気すら危険に感じるような美術演出と映像の説得力が印象的で、人型のキノコ怪物の造形は同系のホラー映画の中では現状(2025年現在)では一番クオリティが高く、それを見れただけで非常に満足度が高かったです。
初代プレイステーション並の低品質ポリゴンで描かれた『恐怖!キノコ男(2006)』のチープさも嫌いではありませんが、キノコ系ホラーはやはり リアルで不気味な造形と、身体への侵食描写の気持ち悪さ が重要だと思っています。
本作は、生理的嫌悪感と神秘性を融合させたタイプで、
「自然は人間より上位の存在なのか?」
――そんな問いを投げ掛けられているのかな、と感じたり、感じなかったり。
まとめ:私的な「Gaia」考察

映画は多くを語らないスタイルで、伏線のような断片が提示されるものの、明確な答えは示されません。
視聴後にモヤモヤした余韻と考察の余地が残るタイプの作品と言えそうです。
(映像の美しさで騙されているだけで、もしかしてよくあるB級ホラー映画のように、細かいことを考えずに勢いで撮影されただけの可能性もゼロではない)
寄生キノコのホラー映画として見れば完成度も高く、私はかなり楽しめました。
ただ、映画のテーマやメッセージが何を訴えかけているのかは最後まで理解できず、監督の哲学や意図を掴むのは難易度が高いと感じました。しかしまあ、作り手の意図を鑑賞する側が無理に受け取る必要も特にないと思っています。
楽しむために観る映画なのですから、観た本人が面白いと感じればそれで十分ではないでしょうか。
私の場合は、気持ちの悪い映像表現が視覚的に楽しめればそこそこ満足してしまうので、かなり安上がりです。
そして、仮に高尚なテーマが含まれていたとしても、この作品に対して評論家めいた説得力のある考察をするのは私には向かないようです。なにせ、俗っぽい所感しか抱けませんので。俗っぽい考察しか出来ません。
最後に凄くどうでもいい話なのですが……。
この映画の、菌類が人間を侵食していく映像にワクワク出来た人間なら、X-ファイルのシーズン4、第11話「カビ」というエピソードもきっと楽しめると思います。
もし未見であるならば、機会があったら是非鑑賞してみて下さい。
蛇足編:『侵略円盤キノコンガ』もいいよ!
不気味系キノコ・ホラー映画の記事を書いていると、ふと、子供の頃に人間に寄生するリアルなキノコの作画で割とトラウマになった白川まり奈の『侵略円盤キノコンガ』を読み返したくなってきました。
曙文庫から出版されていた作品で、当時の定価は280円。気持ち悪さ抜群のキノコ系ホラーマンガです。
ご存知でしょうか?
ゲテモノ・カルト系、貸本屋時代の恐怖漫画が好きなら、きっと気に入るし、面白いと思います。
映画『マタンゴ』に影響を与えた短編『夜の声』
ウィリアム・ホープ・ホジスンの海洋怪奇短編『夜の声』は、映画『マタンゴ』に影響を与えた作品として語られることの多い名作です。
この作品のコミカライズとして非常に完成度の高い、くずはら和彦『霧の中の声』が存在します。
劇画調の画力と短編としてのまとまりも素晴らしく、ぜひおすすめしたい作品なのですが、収録されている書籍名を特定できず、詳細をご紹介できないのが残念です。
私が読んだのは90年代、怪奇系の短編として大人向け漫画誌に読み切り掲載されていた一回限りの作品です。単行本に収録されていたわけではなく、雑誌掲載のみで読んだため、掲載誌名までは思い出せません。
当時の漫画家は複数の名義で活動しているケースも多く、くずはら和彦名義で単行本化されたコミックが存在するのか、あるいはその中に収録されているのかも判然としていません。
もしどこかのコミックに収録されていたとしても、それを特定する手段が現状なく、確認できていない状況です。
もし掲載誌や収録単行本の情報がわかれば、見つけ次第コレクションとして購入したいと考えています。

