「バイオ・スキャナーズ/Body Melt」とは
1993年にオーストラリアで公開された「バイオ・スキャナーズ/Body Melt」は、人体崩壊系ホラーとブラックコメディが融合したカルト映画です。
監督はフィリップ・ブロフィで、その奇抜なビジュアルと過激な表現で話題を呼びました。
特殊効果&メイクはボブ・マッカロンで、この方は有名な映画では、かの痛快スプラッター・ホラーのブレインデッド/Braindead Aka Dead Alive(ニュージーランド1992年)を始めとし、マッドマックス2(1981年)、マッドマックス サンダードーム(1985年)、マトリックス(1999年)等のSFXも担当しているらしい。
既に廃版ですが過去には日本語字幕版もありました
「Body Melt」は1995年に日本語字幕版のVHSビデオが発売されており、昔にレンタルビデオで借りて、実は一度視聴している。
初見時に観た、冒頭で車を運転中の男の肉体が変貌するシーンが強烈に印象に残っており、VHSを取り扱うレンタルビデオ店が消滅した頃に、もう一度鑑賞したいと思うもののタイトルが思い出せず、何だったかな? 何だったかな? と非常に気になりながらも何年も過ぎ去ってしまった。
しかし先日、偶々Amazonで、何かの拍子であなたへのおすすめDVDに「Body Melt」が表示され、ジャケットが気になって詳しく調べてみると、これが長年タイトルが不明だった「バイオ・スキャナーズ」の原題だったと判明した。勿論、即購入した。
最初見た時はSFXは良いんだけどストーリーの意味不明な奇妙な映画だな、としか思わなかったが、改めて見直すと非常に面白かった。
海外のDVD版のジャケは何か格好良い。Blu-ray版はB級映画感が強い。日本発売版はまた違うジャケである。
邦題が何故「バイオ・スキャナーズ」になったのかの憶測
この「Body Melt」という映画、タイムアウト誌2012年9月10日の映画紹介で「爆発する胃や体液に対する嘔吐的な拘りや、ブラックユーモアがふんだんに盛り込まれている(適当に翻訳)」と書かれているくらいなので、多分、邦題の「バイオ・スキャナーズ」は、人体が爆発するから「スキャナーズ/Scanners」(カナダ1981年)シリーズの亜種っぽく「〇〇スキャナーズ」としておけば良いか、くらいのノリで付けられたのではないかと思われる。(憶測であり確証は無い)
今回は、ストーリー全体の流れと感想を中心に、本作の魅力を紹介しようと思います。
DVDには英語字幕しかありませんので、昔見た日本語字幕版の記憶と、拙い読解での内容把握となりますので、内容が何処まで正確かは保証出来ません。気になる方は、是非ご自分での鑑賞をお願いします。
「バイオ・スキャナーズ/Body Melt」あらすじを簡単に
著作権への配慮のため(不特性多数へのネタバレの自粛)、ネタバレありあらすじの詳細はnoteに移します。
舞台は、オーストラリア・メルボルン郊外の住宅地「ペブルズコート」。
住民たちは、製薬会社「ヴィムヴィル」が無料配布する新しい栄養補助食品
「ヴァイブレート」を何気なく日常的に摂取していました。
しかしその実態は、住民を臨床実験の被験者として利用するためのものでした。
研究者ライアンは、この非倫理的な計画を阻止しようと動き出しますが、その行動は「ヴィムヴィル」の代表シャーンに察知され、封じ込められようとします。
ライアンがペブルズコートに向かう途中で体調に異常をきたし始める描写を契機に、物語は本格的に動き出します。
やがて住民たちの間に説明のつかない症状や不可解な身体の変調が現れ、「ヴァイブレート」の副作用として恐るべき事態が広がっていきます。
平和な日常は崩壊し、住宅街は混乱と恐怖の渦へと飲み込まれていきます。
「バイオ・スキャナーズ/Body Melt」の登場人物
本作は、複数の視点や出来事が断片的に積み重なっていく形式で描かれますが、登場人物たちが「ヴァイブレート」と呼ばれる物質の影響で異常事態に巻き込まれていく様子が本筋です。
元々、「汚くて下品な画さえ撮っておけば客は満足するだろう」という趣旨一貫で作られたような映画で、突っ込みどころしかない粗いストーリー構成のため、設定を含めても理解不能な部分が非常に多い作品です。
さらに途中から、荒野で暮らす奇妙で風変わりな一家が登場し、話のややこしさが倍増します。
そのため、ストーリーの理解は非常に難解で、作品紹介自体も困難です。
よって以下では、登場人物を中心に整理して簡潔にまとめていきます。
「バイオ・スキャナーズ/Body Melt」の登場人物一覧
名前は、英語字幕から音をそれっぽくカタカナ表記しているだけなので、昔発売されていたVHSの日本語字幕版と異なる可能性が高いです。
ペブルズコートの住民
ヴィムヴィル社が極秘裏に進めていた新薬の “臨床実験地” とされる地域。
しかし、住民はその事実を知らされておらず――
やがて、住民の不可解な体調不良が相次ぐこととなる。
No.12 ノーブル家
- トンプソン
ノーブルの家長。アンジェリカの夫。エロイーズ、ブランドンの父。
健康オタクで、日々のジョギングを欠かさない。
ヴィムヴィル社の招待を受け、メガ栄養食と称される試食品を口にした結果、肉体に異常な変化が現れ、思いもよらぬ結末を迎えることになる。 - アンジェリカ
トンプソンの妻で、エロイーズ、ブランドンの母。
家族で招待されたヴィムヴィルの施設で提供された「メガ栄養食」を口にするが、その後起きた異変をきっかけに、娘とともに施設から脱出を試みる。
彼女の運命は――。 - エロイーズ
ノーブル家の長女で、ブランドンの姉。
家族とともにヴィムヴィルを訪れ、恐怖と混乱が広がる状況の中で、母とヴィムヴィルから脱出する。 - ブランドン
ノーブル家の長男。エロイーズの弟。
ヴィムヴィルの施設内で遊んでいた最中に、身体能力と感覚に異常が生じ――。
No.11 ランド家
- ブライアン (この映画、似た名前が多いので混乱する。)
シェリルの夫。
妻に起きた異変の直後、事件への関与を疑われ、警察に連行される。 - シェリル
ブライアンの妻で妊娠中の女性。
主治医のカレラ博士から投与された薬物の影響によって身体と胎児に深刻な異変が発生し――。
No.9
- ポール・マシューズ
ヴィムヴィル内部で実験対象に選ばれていた人物。
ヴァイブレートの服用で幻覚に苦しむ。 - ケイト
ポールの前に現れる女性。幻覚?
No.10
- サル・チッコーネ
友人ジーノと共にヴィムヴィルへ向かう途中、ルートを誤って道に迷う。
挙げ句、片田舎で独立生活する風変わりな一家に接触し仲良くなるが――。 - ジーノ・アルジェント
サルと一緒にヴィムヴィルへと向かう青年。しかし彼も――。
警察
ライアンの事故をきっかけに、警察もヴィムヴィルの実態調査に乗り出すことになる。
- サミュエル・フィリップス
ライアンの事故を担当し、ヴィムヴィル周辺の調査に乗り出す刑事。
調査の中で企業活動に不審点を見つけ、事件の規模が次第に大きくなっていく。 - ジョンノ
サミュエルの相棒として捜査に同行する刑事。 - ウィリー
科学捜査担当。
ライアンの検死を行い、体内から未知の薬物が検出されたことを報告する。
ヴィムヴィル
新種のビタミン/サプリメントである安全性未確認の「ヴァイブレート(A-59)」を販売していた会社。
- ライアン・ブレナン
ヴィムヴィルに関わる問題を止めようと行動した科学者。
その行動は、結果的に警察の介入へ繋がるきっかけとなったように描かれる。 - シャーン
ヴィムヴィルの代表者の女性。
ライアンにA-59を投与して死亡させ、ペブルズコートの住民を実験対象として扱っていた。
後に、自らヴァイブレートを摂取し――。 - カレラ博士
ヴァイブレートの研究に関わった医師。
妊婦であるシェリルにヴァイブレートを投与し、臨床実験を行っていた描写がある。
被験者のポール・マシューズに襲われる。 - スタッフA
ヴィムヴィルのスタッフの一人。ボディビルダーのように筋肉質な男。ヴァイブレートを摂取した直後、局部異常の描写がある。 - スタッフB
ヴィムヴィルのスタッフの一人。ボディビルダーのように筋肉質な男。ヴァイブレートを摂取し、女性との行為の最中に背中が裂ける異常が生じる。
荒野の一家
アメリカの片田舎で共同生活を営む家族的な集団。
外部からは孤立したようにも見える独自の暮らしをしており、訪れた者に強い違和感を与える雰囲気を持っている。
- パッド
集団の中心に立つ男。かつて科学研究に関わっていた過去が示唆され、その経験が現在の生活方針にも影響しているように見える。
身体には、過去の実験によるものと思われる異変が残っている。 - バブ/ブロント/スラブ
外見や言動に独特の特徴を持つメンバーたち。どこか世間と隔絶された雰囲気をまとった存在として描かれる。 - マック
生活全般を支える役割を担う女性。背が高い。 - 老女
家の奥で椅子に座り、ポルノビデオを観ている姿が描かれる。
まとめ
「バイオ・スキャナーズ/Body Melt」は、その過激で汚らしいビジュアルと、期待を裏切らない下品な展開で観る者を楽しませてくれます。
人体崩壊異形化系ホラーの要素をふんだんに取り入れた本作は、視覚的なインパクトだけでなく、現代社会の健康産業に対する風刺も感じさせる作品です。
カルト映画としての地位を確立しており、ホラー映画ファンには一見の価値があります。興味がある方には是非、ご自分の目でこの奇作ホラーの世界を鑑賞して頂きたい。

