海外版DVDを購入して観た感想+独自解釈レビューです。心理スリラー要素が強く胸糞後味系。苦手な方は注意。
「インフィニティ・プール/Infinity Pool」とは?
2023年1月にカナダで公開され、2024年には日本でも公開された「インフィニティ・プール」( 製作国:カナダ・ハンガリー・フランス)は、心理的スリラーとSFが融合した独特の作品です。
監督、脚本はブランドン・クローネンバーグで、彼の手掛ける緊張感あふれる演出が話題となりました。
知人が自分は見てはいないがこの映画が中々面白そうと教えてくれたので、Amazonで売っていた国内発送の海外版DVDを購入して「インフィニティ・プール」を鑑賞しました。英語字幕なので内容の理解は割と怪しいです。
因って記事内の、あらすじやネタバレには、個人的な解釈が多分に含まれております。
この映画のジャンルですが、ホラーというよりはSF風味のサスペンスに感じました。鑑賞の途中で眠くなって、自分ではそんなに面白いとは思えなかったのですが、世間一般の評判は高いらしいので、確り紹介してみたいと思います。
物語の大まかな流れについては、海外レビューや公式情報を参考にしつつ、独自解釈でまとめています。
あらすじとネタバレ(ダイジェスト)※未見の方は注意
著作権への配慮のため(不特性多数へのネタバレの自粛)、ネタバレありあらすじの詳細はnoteに移します。
前半
裕福な妻エムの実家の金で食っているヒモ、冴えない自称・作家ジェームズ(※6年前に1冊本を出しただけ)が、リゾート地「リ・トルカ」に滞在するところから始まります。
ここで新作のインスピレーションを得たいらしいのですが、完全にスランプ(作家としての才能の欠落)で何も思いつきません。(個人的な解釈)
この島は一見平和ですが、実は奇妙なルールや風習があります。
もし日本の漫画なら、諸星大二郎の稗田先生がフィールドワークに来そうな場所です。
そんな折、ジェームズは自分の熱狂的ファンだと名乗る女性・ガビに声を掛けられ、夫アルバンを紹介されます。ファンの出現に内心浮き足立つジェームズは、妻も交えて食事・ドライブへとホイホイ付いて行きます。
ところが夜の帰路、酔ったアルバンの代わりに運転したジェームズは、暗闇で通行人を轢き殺してしまいます。
警察を呼ぼうとするも、ガビ達は「野蛮な国だから関わるな」と焚き付け、結局そのまま逃走。しかし翌朝、あっさり逮捕され、この国独自の法律で死刑宣告を受けてしまいます。
この島には「ハンムラビ法典」的なぶっ飛んだの法律があり(大丈夫なのか、この観光地?)、被害者の遺族による「目には目を」方式での処刑で、息子がジェームズを殺すという内容です。
ただしこの国には、金持ち向けのとんでもない救済制度があり、高額の費用を払えば自分のクローンを作成し、代わりに処刑させることで罪を「精算」できるらしい。
科学力が凄いのに原始的、そして拝金主義な嫌な国です。観光客用の救済処置らしいので外貨稼ぎが目的なのかもしれません。
ジェームズは理解が追い付かないまま制度を利用しますが、自分そっくりのクローンが処刑される様子を見せられ、強烈な罪悪感と恐怖に襲われます。
ここから情緒が崩壊していきます。
後半
パスポートが突然消え、帰国できなくなったジェームズ。
そこへガビが再び現れ、「あなたの為にやったのよ」などと甘言を囁きます。
そして 同じくクローン処刑を経験した金持ちの道楽者たちを紹介します。
実はガビ達は、金と暇を持て余した倫理観ゼロの問題児集団で、犯罪を繰り返してはクローンが処刑されるのを、ショー感覚で楽しんでいる狂人たちでした。(個人的解釈)
よせばいいのに仲間になったつもりのジェームズは、実際にはガビ達から完全に玩具として扱われ、誘われるまま犯罪を重ね、クローン製造→処刑の見学を繰り返す悪循環へ。
ついには、袋を被せられて誰だか分からない人物を自分の手で痛めつけ、殺した後、それが実は自分のクローンでした! という最悪のサプライズを仕掛けられ、精神が崩壊します。
妻エムとの関係も破綻し、エムは一人帰国。
ジェームズは自分が何者なのか分からなくなり、アイデンティティを喪失します。
そして最後、ガビ達は満足げに帰国便へ乗り込み、ジェームズは空港でぼんやり座り込んだまま何もできず、再びホテルへ戻り、激しい雨に打たれながら無表情でビーチベッドに横たわります。
それが何を意味するのかは観客に委ねられたまま、物語は幕を閉じます。
(※これはあくまで個人的解釈を含むダイジェストです)
まとめ
「インフィニティ・プール」は、金さえあればどんな犯罪を犯しても、クローンを作って身代わりにすれば無罪放免なので、何でもかんでもやり放題の倫理観が崩壊した胸糞悪い系の映画です。
この映画の中で、特別心が繊細だった訳でも無いのにジェームズの精神だけがドンドン破壊されて行きますが、ガビ達の精神構造が常軌を逸しているだけで、一般人であれば、自分のクローンが自分の目の前で処刑されるのを何度も見せられたら、ジェームズの様に気が触れて精神に異常を来してしまっても別に不思議ではありません。
この映画の監督は、人間のアイデンティティと倫理観を深く掘り下げたテーマの作品を撮りたかったのかも知れません。
観る者に不快で強烈な印象を残すそのストーリーは、一度観たら忘れられない後味の余韻を残してくれるでしょう。
ただ、この映画の監督であるブランドン・クローネンバーグは、あの『シーバース』や『ザ・ブルード/怒りのメタファー』、『スキャナーズ』『ヴィデオドローム』などで知られる
デヴィッド・クローネンバーグの息子です。
それを知ると、なぜこんな異様な世界観と作風になったのか──
ああ、血筋だなと、どこか納得してしまう気がします。
感想
「インフィニティ・プール」は、ホラーというよりスリラーとかサスペンスに近い映画でした。あってないようなSF要素も微妙でした。そもそも、何の説明もないので、どういう原理でクローンを作っているのかもよく判りません。
何と言っても、リ・トルカの科学力はァァァァァァァアアア 世界一ィィィィーーーーッ! 過ぎです。ホラー映画の全般でナチスの科学力も大概ですが、リ・トルカもそれに迫っています。ちょっと、ク・リトル・リトル神話の逸話で出て来そうな科学力です。
正直、自分の好きなジャンルのホラーでは無かったです。上映時間も殆ど2時間と尺が長くて、見ている途中で結構ダレてきました。セリフは少な目で、象徴的な映像描写のシーンが多かったです。
しかし、この映画は、心理的なサスペンスが好きな人にはおすすめかもしれません。ぜひ一度、鑑賞してみてください。

