バッテリーでも使えるDC24V入力のステーション型はんだこて
温度調整式のはんだこてを使えば、コテ先の温度は安定します。高すぎたり低すぎたりすることなく温度が安定すると、はんだ付けが容易になり、仕上がりもきれいにできます。
温度の安定だけが目的であれば、柄の部分に温調用のコントローラーが内蔵されている一体型はんだこてでも十分な気がするのですが、物欲に負けて、温調用コントローラーが別になっているステーション型はんだこてに手を出してしまいました。
購入したのは「T12-942」という機種で、型番で検索するとYouTubeにいくつか紹介動画が上がっており、海外ではそこそこ知られている製品のようです。
AliExpressで3000円ちょっとで購入しました。Amazonでは最安で4000円台くらいから出品されています。製品の詳細やレビューは、約1万1000円で販売されている商品ページが参考になります。
DC24Vで動作するので、バッテリーでも使えるコンパクトなステーション型はんだこてです。ただし、電源は付属していません。
商品のレビューを見ていると「12.3V以上の電圧で動作する」というコメントが見受けられました。Amazonの出品ページによれば、19V以上の電源であれば問題なく使えるようです。
そして届いた商品の外箱には「入力電圧12V-24V」と書かれていました。実際に最低何Vから使用可能なのかは非常に気になるところです。

温度設定の上限は480℃らしいのですが、商品の注意書きには「コテ先が酸化して傷みやすくなるため、温度設定は380℃以下に抑えた方が良い」と記載されていました。
この製品の購入者レビューは概ね肯定的で、高評価が多いです。ただし、AC-DC変換用の電源が付属していないことを確認せずに購入した一部のユーザーが、「電源が付属していなかった」と否定的な意見を述べていました。
コテ先はもちろん交換式で、HAKKO(白光)のT12シリーズ(お値段約2万円のFX-950シリーズ用)と互換性があり、使用可能です。



なお、AC 110V~240V入力でそのまま動作する「T12-952」という兄弟機種もあります。

はんだこて用に固定電圧の安定化電源を使う
T12-942の電源ですが、MAXで5A、常時でも3Aほど必要らしいので、AliExpressで約1200円で購入した24V5Aの安定化電源を使いました。
T12-942には電源まわりの配線が一切付属していないため、まず安定化電源側の端子とT12-942側のDCジャック(メス)を接続するための電源コードは、自作で用意する必要がありました。
20Vあれば問題なく動作するようなので、60W以上(できれば100W)の出力があるUSB PD対応電源から、PDトリガーを使って20Vを取り出せば、それでも使用可能と思われます。



白光や太洋電機産業(goot)の製品とは違い、T12-942は買ってすぐに使えるわけではなく、まず電源を用意するところから始めなければなりません。
このあたりの不親切な仕様は、初心者にはあまり優しくありません。
しかしその分、こうした“ある種マニア向け”の商品は、性能の割に価格が安く、周囲に同じものを使っている人も少ないので、手に入れるとちょっとしたプレミアム感を味わえるところがあり、個人的にはとても気に入っています。
電源を別途用意しても合計で4000円強に収まるT12-942と、ほぼ同等の性能を持つ[太洋電機産業(goot) ミニステーションはんだこて PX-501]の実売価格が約8000円であることを考えると、海外製という点を差し引いても、T12-942は非常にお買い得と言えるでしょう。

T12-942の処女通電

今回はコテ先4本付きのセットを購入したため、T12-942の箱の中には、B・C・J・K型の4種類の交換用コテ先が同封されていました。
ヒーターの上にかぶせて使う、よくあるネジ式の交換式コテ先(900M-T)と違い、T12シリーズのコテ先はヒーターと温度センサーが一体化しているため、サイズがかなり長めです。
そのおかげで熱応答性が高くなっていますが、同時に交換用コテ先の価格も少々お高めです。
最初に使うコテ先はJ型にしました。この形状、基板上の細かい電子部品をはんだ付けするのに、けっこう便利です。
安定化電源につなぎ、T12-942の電源をオンにすると、ディスプレイが点灯してコテ先の温度が表示されます。
加熱中は消費電力が一時的に72Wまで上がるようで、加熱スピードは早く、すぐにはんだ付け可能な温度に達しました。

本体のダイヤルを回すと設定温度を変更できます。ディスプレイの上部に小さく設定温度が表示され、中央には大きな数字で現在のコテ先の温度が表示されます。
設定温度を変更すると、実際のコテ先の温度もかなりの速さで追従してくれます。

ディスプレイには、リアルタイムで変化する入力電圧や消費電力も表示されます。
私の使っている安定化電源の電圧は、負荷が低いときで約23.5V、消費電力が増えると一時的に23Vまで降下していました。
この程度の電圧変動であれば、十分に許容範囲内でしょう。


T12シリーズのコテ先も、ステーション型のはんだこても今回が初めての使用でしたが、これはかなり使いやすいです。
柄の部分に温調基板が入っているタイプのはんだこても十分に機能的ではありますが、やはりステーション型の方が温度調整がしやすく、動作も安定していると感じます。
白光などの高価格なハイエンドのステーション型はんだこてには及ばないのでしょうが、個人の趣味として電気工作に使う分には、4000円のT12-942でも性能は十分すぎるほどです。
これは買って正解でした。私のように、はんだ付けの腕に自信がない人間でも、良い道具を使えば、きれいでストレスの少ないはんだ付けが楽しめます。
また、私はT12-942に付属していたコテ先でも使いやすいと感じていますが、中華製コテ先の品質に不安を感じる方は、コテ先だけ白光の純正品を購入するという選択もアリです。
そうすれば、さらに一段階上の使いやすさが得られるかもしれません。
コスパ重視のステーション型を探しているならT12-942は魅力的!
というわけで、T12-942は、ちょっとした準備こそ必要ですが、しっかりとした温度制御と十分な加熱性能を備えた、コストパフォーマンスの高いステーション型はんだこてです。
電源を自分で用意しなければならないという点は、逆に言えば、用途や環境に応じて電源を選べるという自由度の高さにつながります。
特に海外製品は、AC110V~240V対応の仕様が多く、日本の定格100V環境で使用するには、むしろ自分でDC電源を用意して使った方が、安全面や動作の安定性を考えても無難かもしれません。
純正のT12コテ先が使えることも含めて、拡張性や将来性も十分。初めてのステーション型としても、セカンド機としても、かなり「アリ」な選択肢だと思います。
「ちょっと面倒なところもあるけど、そのぶん高コスパ」。そんなガジェットが好きな人には、T12-942、なかなかおすすめです。
参考資料:日本語化マニュアル
T12-942付属マニュアルの機械語翻訳です。ほぼ自分用です。
エンコーダのツマミを押すと設定モードに入りますので、その参考にして下さい。




