プラスチックの溶接 溶着って言うと響きが恰好良いよね!
溶着って単語を初めて耳にした時は、何か宇宙刑事ギャバンの蒸着みたいで響きが恰好良いな、と阿呆な事を考えました。
さて、溶着ですが、それが何かと言うと、接着剤で接着し難いプラスチック系の樹脂素材を、熱で溶かして接着する手段です。
この溶着と言う手法、割れてしまったポリプロピレン製品の修理なんかで非常に重宝します。
例を上げると、割れた車の樹脂バンパー(大体がポリプロピレン製)を、強度を落とさずに元通りに修理するのに使ったりします。
破損したポリプロピレン製のケース等の修復にも使えます。ポリプロピレン製の板と板を強力に接着したい時等にも使えます。
プラスチック樹脂用の熱溶接機はそんなに高くない……が、やはり白光のはんだこて利用が安い!
プラスチック樹脂の溶着……熱でプラスチック樹脂を溶かして溶接する機械は、実はそんなにお値段は高くなく、プラスチック樹脂の溶接機として販売されている商品を買ってもお手頃な価格でお安いです。
種類としては、クリップを先端に取り付けて、それを電気で加熱して埋め込むタイプと、はんだこての先に溶着用のこて先を取り付けて溶着するタイプの2種があります。
下の商品は、先端にクリップを取り付けて加熱して埋め込む溶接機です。↓
元々お値段はそんなにしませんが、Amazonのセールで買うと更に20%くらい値引き価格で買えたりします。
溶着にはクリップを商品するので、無くなったらクリップを買い足す必要があります。
下の商品は、はんだこてタイプのプラスチック樹脂の溶接機です。
一応、溶着専用のはんだこて本体と、溶着用のこて先がセットになり、溶着に使用するプラスチック樹脂の棒が付属しています。
クリップタイプのプラスチック樹脂溶接機と異なり、適当な針金等をこて先で修理対象に埋め込み、プラスチック樹脂を溶着します。
で、まあ何が言いたいのかと申しますと!
クリップタイプのプラスチック樹脂溶接機が欲しいのなら別ですが、はんだこてタイプの商品で良いのであれば、態々専用のセットを購入しなくとも、溶着用のこて先と、それを挿せるサイズのはんだこてがあれば、代用品として充分に事足りると言うお話です。
実は、プラスチック樹脂溶接機セットとして販売している溶着用のこて先は、単品で普通に販売されております。↓
ただこのこて先、割と径が太く(5ミリくらい)どんなはんだこてにでも挿せる訳ではありません。
結構太めのこて先が挿せるはんだこてが必要となります。
そこでおすすめなのが、白光のはんだこて、REDシリーズの60Wです。↓
白光のはんだこて、REDの60Wは、上手い具合にこの溶着用の安いこて先が挿さります。
REDの60Wは大体1000円ちょっと、こて先は1本みのを買えば200円くらいです。
その気になれば、1500円掛からずに、プラスチック樹脂用の溶接機が揃います。
なんてお安い!
溶着に使う金属はそれこそ細目の針金で充分ですし、盛るのに使用する樹脂もダイソー等の100均で入手可能です。
溶着する対象がポリプロピレンなら(ポリプロピレン製品は多い)、ダイソーで購入出来るポリプロピレンシートを細く切れば、それで充分です。
ナイロン樹脂製品であれば、結束バンドが使えます。それも、新品の結束バンドを使わなくても、固定しても切り離した後のゴミを取って置けば、それで充分に事足ります。
そして、白光のはんだこて、REDの60Wの場合、こてのヒーターの熱量が大き過ぎる事も少な過ぎる事も無く恰度良いレベルなので、溶着がやり易いです。
この辺もおすすめの理由です。
熱量が小さくても良ければダイソーのはんだこて(30W)でも溶着出来ます
市販の安いこて先を買ってプラスチック樹脂の溶着をするのなら、白光のはんだこて、REDの60Wがおすすめですが、市販品の溶着用のこて先を利用しないなら、ダイソーで550円(税込)で購入可能な現行の30Wはんだこてでも溶着は出来ます。
試してみた感じ、30Wのはんだこてだと熱量が足りなくて、広範囲を一気にとかの作業だとちょっとキツいですが、ちょっとした小物の溶着なら、100均ダイソーの30Wはんだこてでも充分です。
ただその場合、安い市販品の溶着用のこて先は太過ぎて入らないので、利用出来ません。
じゃあどうすれば良いのかと言うと、元々付いているこて先と同じ径の真鍮パイプを買って来て、適当な長さに切って、先を平べったく叩いて潰してから、はんだこてに挿せば、それで代用可能です。
ただ、私は加工が面等臭いので白光の690-Tと言うこて先を買って、使用しています。
このこて先は、本来の用途としては手芸用の布に使うミニアイロンらしいてすが、径は4φなので、小ワット数のはんだこてでなら大体使えます。
家にあるダイソーの30Wはんだこては400円(税別)で販売していた頃の旧製品ですが、現行も径が変わってなければピッタリ挿さる筈です。
現行品のダイソーはんだこてに関しては、未所有なので未確認です。
しかし、この白光の690-Tですが、こて先のみでお値段がなんと1000円くらいするので、お買い得と言えるかどうかは微妙です。
こて先を消耗品と考えるなら、交換時の事を考えると、白光のはんだこて、REDシリーズの60Wと安物こて先を使用した方が、良い様な気がします。
参考迄に身の回りの製品に使用されるプラスチック樹脂の種類 融点や接着難易度に付いて
身の周りの製品によく使用されるプラスチックには、用途や特性に応じて様々な種類があります。
以下に代表的なものを挙げ、それぞれの特徴や使用例を説明します。溶接時の参考に融点や、もし接着剤で接着する場合にどんな接着剤を使用すれば良いのかを纏めました。
参考迄に、鉛入りはんだの融点が約183℃です。それを考えると、プラスチック樹脂の融点は結構高いです。これが、溶着する時、はんだこての熱量が或る程度必要となる理由です。
*融点に関しての補足
プラスチックの融点は種類によって異なり、さらに同じ種類でも添加物や加工の違いにより多少変わる場合があります。以下は、主なプラスチックの一般的な融点や熱変形温度の目安です。
「融点」が明確に記載されていない場合は、プラスチックの構造(結晶性またはアモルファス)によるものです。
結晶性プラスチック: 明確な融点があり、一定温度で固体から液体に変化する(例: PE, PP)。
アモルファスプラスチック: 明確な融点はなく、加熱に伴い徐々に柔らかくなる(例: PC, PS)。
用途に応じた加工温度を知る事が重要です。
*接着に関しての補足
プラスチックの接着性は、樹脂の化学構造や表面特性に大きく影響されます。以下に、各プラスチック樹脂の接着のし易さと適した接着剤を解説します。
*接着の際の注意
表面処理:
サンドペーパーで表面を粗くする。
アルコールなどで表面を脱脂。
プラズマ処理や特殊プライマーの塗布。
接着剤の選び方:
用途や環境条件(耐熱性、防水性、透明性)に応じたものを選ぶ。
必要に応じて接着剤メーカーの推奨品を確認。
接着後の固定:
クランプやテープで接着部を固定し、完全硬化を待つ。
プラスチックの種類に応じて最適な方法を選ぶ事で、強度と耐久性の高い接着が可能です。
1. ポリエチレン (PE)
- 特徴: 柔軟性が高く、耐薬品性や耐水性に優れる。軽量。
- 使用例:
- レジ袋、食品包装、プラスチックボトル
- 水タンク、パイプ
- 融点: 約110〜135°C(種類により異なる)
- 高密度ポリエチレン (HDPE): 約120〜130°C
- 低密度ポリエチレン (LDPE): 約105〜115°C
- 接着の難易度: 非常に接着し難い(表面エネルギーが低く、撥水性が高い)。
- 適した接着剤:
- 特殊プライマーを塗布後に瞬間接着剤(シアノアクリレート系)。
- 二液型エポキシ接着剤(接着力を強化する為、表面処理を推奨)。
2. ポリプロピレン (PP)
- 特徴: 耐熱性や耐薬品性が高い。軽くて頑丈。
- 使用例:
- 食品容器、電子機器のケース、洗濯機内部のパーツ
- プラスチック椅子、おもちゃ
- 融点: 約130〜170°C
- 接着の難易度: PEと同様に接着が難しい。
- 適した接着剤:
- 特殊プライマーを併用した瞬間接着剤。
- 熱可塑性樹脂用の接着剤(例: ホットメルト接着剤)。
- 表面を粗くするか、プラズマ処理を行うことで接着性向上。
3. ポリ塩化ビニル (PVC)
- 特徴: 耐久性が高く、防水性に優れる。硬質と軟質の両方が存在。
- 使用例:
- 水道管、窓枠、床材
- ケーブルの被覆材、シャワーカーテン
- 融点: 明確な融点なし(分解温度: 約160〜190°C)
- PVCは熱を加えると分解しやすい性質があるため、加熱加工には注意が必要です。
- 接着の難易度: 比較的接着し易い。
- 適した接着剤:
- 溶剤型接着剤(PVC同士の接着に効果的)。
- 一般の瞬間接着剤。
- 二液型エポキシ接着剤(高強度が必要な場合)。
4. ポリスチレン (PS)
- 特徴: 透明性が高く、成形が容易。衝撃に弱い。
- 使用例:
- 発泡スチロール、カップラーメンの容器
- CDケース、使い捨ての食器
- 融点: 約210°C(アモルファス構造のため明確な融点はなし)
- ガラス転移温度(Tg): 約95°C
- 接着の難易度: 接着し易い。
- 適した接着剤:
- 溶剤型接着剤(PSを溶解して接着)。
- シアノアクリレート系接着剤(瞬間接着剤)。
- エポキシ接着剤(高強度用途向け)。
5. ポリエチレンテレフタレート (PET)
- 特徴: 透明性が高く、リサイクル性に優れる。食品安全性が高い。
- 使用例:
- ペットボトル、食品トレイ
- 繊維(ポリエステルとして)
- 融点: 約250〜260°C
- ガラス転移温度(Tg): 約70〜80°C
- 接着の難易度: 表面エネルギーが低く、接着性が中程度。
- 適した接着剤:
- UV硬化接着剤。
- 特殊プライマーを塗布した瞬間接着剤。
- エポキシ接着剤(表面処理後)。
6. アクリル (PMMA)
- 特徴: 高い透明度と耐候性を持つ。
- 使用例:
- 看板、窓ガラスの代替
- 水槽、ディスプレイケース
- 融点: 明確な融点なし(分解温度: 約150〜200°C)
- ガラス転移温度(Tg): 約100〜105°C
- 接着の難易度: 接着し易い。
- 適した接着剤:
- アクリル用溶剤型接着剤。
- UV硬化接着剤(透明接着を必要とする場合)。
- シアノアクリレート系接着剤。
7. ナイロン (PA)
- 特徴: 高強度で耐摩耗性がある。
- 使用例:
- 衣類、歯車、ケーブルタイ
- スポーツ用品、釣り糸
- 融点: 約190〜270°C(種類により異なる)
- ナイロン6: 約220°C
- ナイロン6,6: 約255°C
- 接着の難易度: 吸湿性が高く、接着が難しい。
- 適した接着剤:
- 二液型エポキシ接着剤。
- ポリウレタン系接着剤(柔軟性が求められる場合)。
- 表面処理(プライマー塗布や粗面化)が必須。
8. ポリカーボネート (PC)
- 特徴: 耐衝撃性が高く、透明性がある。
- 使用例:
- 防弾ガラス、ヘルメット
- カメラレンズ、携帯電話のケース
- 融点: 明確な融点なし(分解温度: 約280〜300°C)
- ガラス転移温度(Tg): 約145°C
- 接着の難易度: 接着性は中程度。
- 適した接着剤:
- UV硬化接着剤(透明接着用途)。
- エポキシ接着剤(高強度用途)。
- シアノアクリレート系接着剤。
9. ABS樹脂
- 特徴: 衝撃に強く、加工しやすい。
- 使用例:
- 家電製品の外装(テレビ、掃除機)
- おもちゃ(レゴブロック)
- 融点: 明確な融点なし(分解温度: 約200〜250°C)
- ガラス転移温度(Tg): 約105°C
- 接着の難易度: 接着し易い。
- 適した接着剤:
- 溶剤型接着剤(ABS特有の溶解接着)。
- エポキシ接着剤。
- シアノアクリレート系接着剤。
10. エポキシ樹脂
- 特徴: 高い接着力、耐熱性、耐薬品性がある。
- 使用例:
- 接着剤、電子基板の封止材
- 防錆コーティング、工業用塗料
- 融点: 熱硬化型のため明確な融点はなし(熱硬化後は分解温度: 約250°C以上)
- 接着の難易度: 硬化後の接着は難しい(熱硬化性樹脂の為)。
- 適した接着剤:
- 二液型エポキシ接着剤(同種のエポキシ樹脂同士を接着する場合)。
- 接着強化のため、表面を粗面化する。
これらのプラスチックは、日常生活から工業用途まで幅広い分野で利用されています。それぞれの特性を理解する事で、適切な用途やリサイクル方法を考慮出来ます。