割と必要になる12V電源 鉛電池よりはリチウムイオン電池で
私個人の話ですが、12V出力の電源が必要になる機会が割とあります。
世の中にそれなりの数が出回っているであろうカー用品、それらは大体12Vで動作するので、電気小物を買うと定格12Vで動作する商品が案外多かったりします。
尤も、最近ではUSBを電源する事を前提にした定格5V動作品も多いのですが、物によっては5Vよりも12Vで駆動する製品の方がパワフル動作するので、敢えて定格12Vの商品を選ぶ事も多いです。
12Vの電化製品を家で動かすには基本、AC-DCアダプターや安定電源を利用するのですが、ACコンセントに挿さずにバッテリーでコードレスで使いたい場合も多いです。
最初は鉛電池(シールドバッテリー)を買って部屋に置いてみた ……が常に満充電にしておかないと劣化する そして処分が面倒
その昔、12V電源が欲しいのなら鉛電池を買って室内に置いておけば良いと考えて、小型のシールドバッテリーを購入して、それを実験や動作チェック用の電源として使用していました。
シールドバッテリーは小さいし、完全密封式なので、仮に横向きに倒れても中から希硫酸が溢れる事も無く、コードレスでパッと使える電源としてはとても便利でした。
しかし、鉛電池は常に満充電にして保管しかないとサルフェーション劣化してしまうと言う性質があったので、取り扱いがとても面倒でした。
使った後には、未だ電力が残っていても直ぐに満充電にしなければならず、暫く使わない時には、忘れずに頻繁に充電して満充電状態を維持しなければなりません。
もう寧ろ、使わない時は常に13.8Vの電圧で1/20~1/30C程度の非常に微小な電流で常にトリクル充電をし続けてやって恰度良いくらいの電池です。
そのくらい気を使わないと、使わないで充電もせずに放置した鉛電池は直ぐに劣化してしまいます。うっかり1ヶ月程度も忘れて放置してしまえば、自然放電で容量が0になってしまい深放電の状態に陥り、そのままお亡くなりになったりもします。
私は実際に、充電を忘れて暫く放置してしまい気付いた時には鉛電池を駄目にしてしまっていた経験があります。鉛電池は一般的なモバイルバッテリーの感覚で使わないようにしないと危険です。そもそも、そんな用途に使う電池ではありませんし。
12Vの鉛電池を劣化させずに長持ちさせるには、かなり管理に気を使わなければなりませんでした。
更に、鉛電池の面倒臭い処としては、寿命が来て駄目になった時、手軽に廃棄が出来ないと言う点です。
乾電池系であれば、駄目になってもホームセンターや家電量販店の電池回収ボックスに放り込むか、ゴミの回収日に出して置けば回収して行ってくれますが、鉛電池はそうも行きません。
オートバックスに持って行けば無料で回収してくれたりもしますが、ホームセンターなんかでは回収が有料だったりするし、ゴミの日に回収もしてくれませんので、少なくとも手軽には廃棄出来ません。
そんな理由から、鉛電池を12V電源に使用するのは已めました。太陽光発電パネルに繋いで蓄電する様な用途に使うのなら鉛電池は優秀なんですが、手軽な電源にするには向きません。
鉛電池のサルフェーション劣化に付いて
鉛電池のサルフェーション劣化は、鉛電池(主に車やUPSなどで使用される鉛蓄電池)の性能が低下する現象の一つです。以下に詳しく説明します。
サルフェーションとは?
鉛電池の電極(主に負極)に、硫酸鉛(PbSO₄)の結晶が過剰に蓄積する現象を指します。
この硫酸鉛は通常の充放電サイクルで生成されますが、次のような条件下では結晶が成長しすぎて電極に堆積し、電池性能が劣化します。
- 長期間放置された場合(特に放電状態のまま)
- 深放電を繰り返す場合
- 充電が不十分な場合
- 過放電をした場合
この結晶化が進むと、電極表面が反応し難くなり、以下の様な影響が現れます。
- 充電効率の低下
- バッテリー容量の減少
- 起動電力の低下
サルフェーション劣化の予防方法
- 適切な充電管理
- 電池が完全に放電される前に充電を行う。
- メーカーが推奨する充電器を使用し、適切な電圧と電流で充電する。
- 長期間放置を避ける
- 長期間使用しない場合でも、数ヶ月ごとに充電を行う(維持充電)。
- バッテリーを完全放電状態で放置しない。
- 定期的なフロート充電
- フロート充電は、完全に充電された状態を維持するための小電流充電を行う方法で、サルフェーションの進行を抑えるのに有効です。
- ディサルフェーション充電器の使用
- 一部の充電器には「ディサルフェーションモード」があり、高周波パルスを利用して硫酸鉛結晶を分解することができます。
- 適切な使用環境の維持
- 極端な温度(高温または低温)を避ける。
- 過放電や過充電にならないように制御する。
サルフェーション劣化の改善方法
既にサルフェーションが発生している場合、完全に復旧するのは難しい場合がありますが、以下の方法で部分的に改善する場合があります。
- 専用のディサルフェーターを使用する
サルフェーション除去専用の装置を利用して硫酸鉛結晶を分解する。 - リフレッシュ充電
高電圧を一時的に加えることで結晶を分解する方法。ただし、慎重に行う必要があります。
これらを行う事で、バッテリー寿命を延ばし性能を維持する事が可能です。但し、サルフェーションが重度の場合、新しいバッテリーの交換が必要になる場合もあります。
モバイルバッテリーとして使うならやはりリチウムイオン電池が楽
市販されているモバイルバッテリーの中身の殆どにリチウム系の充電池が使われている事から考えても、手軽な電源として使用するのが前提なら、やはりリチウム系の充電池が一番使い勝手が良い気がします。
鉛電池と違ってリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池は、1~2年程度放置しておいても電力が自然放電で完全に抜けきって0になる事も無く、ちゃんと残存しているので、ズボラな管理でもそんなに問題は起きません。
色々と考えた結果、リチウムイオン電池を3本使って、12Vのモバイルバッテリーを自作する事にしました。
深く考えすにシールドバッテリーを購入したのは完全に失敗でした。やはり、用途に併せて、電池の種類は正しく選択しないと駄目ですね。
因みに、PDやQCに対応した市販のモバイルバッテリーだと、トリガーデバイスと言う製品を取り付ければ12V/1.5A程度の電力を取り出せたりしますが、元々PDやQCに不対応な相手を動かすのに使うと、トリガーデバイスを介すると正常動作しない場合もあるので、素で12Vを取り出せるモバイルバッテリーを使用した方が無難な時が多いです。
リチウムイオン電池でモバイルバッテリーを自作するなら定電圧監視&過放電防止回路が必要です
今回は18650リチウムイオン電池を3セル直列に繋いで約12Vの電源にするので、例に因って過放電防止回路を作りました。
多分、リチウムイオン電池から取り出せる電流は最大2A程度だと思います。大電流の流れるヘッドライトバルブの点灯テストなんかは無理ですが、ちょっとしたカー用品の動作チェックになら利用出来ます。
下の回路図にはヒューズがありませんが、何処かに入れた方が安全ですので、もし作るのなら出来るだけ入れて下さい。
リチウムイオン電池の単セル電圧が3.5Vに低下した時点で、全体の電圧は10.5Vになるので、この辺を放電終止電圧に設定して、自動停止でその後は待機電流とかも流れず完全にシャットダウンする回路にしてみました。
今回は、単セル毎の電圧監視では無く、纏めての監視を試しています。
3本のセルをそれぞれA、B、Cとすると、(Aが基準電圧以上)&((A+B)÷2が基準電圧以上)&((A+B+C)÷3が基準電圧以上)の条件を満たさなければ、放電を自動停止してその後はもうリセットを掛ける迄、一切電流が流れません。
(Q4~6のトランジスターによるアンド回路で、どれか一つでも条件を満たさなくなったらQ2がオフになり、その結果、連鎖的にQ3、Q1もオフになり、最終的に放電が完全に終了します。)
停止後に、リチウムイオン電池をもし抜き忘れた儘で長時間放置してしまっても、ジワジワと微小電流を消費し続ける事の無い、安心設計(一応)にしたつもりです。
(でも使わない時は、安全の為に極力電池を抜きておきましょう。)
完全な単セル管理では無いので、内部抵抗の差で、どれか1セルだけ過放電になるのを完全には防げませんが、放電終止電圧を余裕を待った3.5V辺りにしておけば、この監視回路でも、手遅れの深放電で電池がお亡くなりになると言う、最悪の事態は避けられると思います。
今回、基準電圧を作るのには、JFETを使いました。定電流ダイオード(CRD)の同等品だと思って下さい。
これを使うと、電圧に影響されず定電流を得られるので、可変抵抗を組合せれば基準電圧を作れます。基準電圧=放電終止電圧です。テスターで電圧を測りながら可変抵抗を廻して終止電圧を設定します。
回路図では可変抵抗は500Ωとなってますが、多回転ボリュームを使用するのなら10Kとかを使用しても大丈夫です。普通の半固定抵抗で10Kを使うと、電圧を設定する時に微調整が全く効かずに死ねます。
何故JFETを使っているのかと言うと、家に買い置き品があったからです。
ある物で何とかする。私の回路設計なんてこんなもんです。
回路にはメインスイッチとスタートスイッチが存在します。メインスイッチをオンにしてからスタートスイッチを押せば放電がスタートします。自動シャットダウンする都合上、スタートスイッチが必要になりました。
設定電圧になれば自動停止しますが、手動で任意のタイミングで放電を停止したい時は、メインスイッチを切って強制停止させます。電池を挿れた状態で使わない時は、メインスイッチをオフにしておきます。
メインスイッチは、大電流が流れるので、電流容量が大きい物を使う必要があります。今回は、余裕を持ってAC125V10A用の製品を使いました。
(AC用をDCで流用する場合は、3分の1程度の容量許容になる。)
オペアンプは4chのLM324を使用しましたが、無ければ、LM358等の2chオペアンプを2個使用しても構いません。数が増えるとオペアンプ電源用の配線が増えるので面倒ですが。
FETやトランジスターも、回路図の通り品番でなくても、スイッチングに使っているだけなので、似た様な特性の別の石を使って貰っても問題無いと思います。
特に回路図のQ1、Q2は、Pch-FETのAOD403と言うAmazon通販とかでなら入手可能だけれど、国内の電子部品取扱店には全く流通していない石を使っていますが、この辺は特にもっと安く買えて入手性の高い石に変更して貰った方が良いと思います。
もし秋月で買うのなら、1個30円のリード部品Pch-FETであるMTP4835I3やMTB060P06I3に変えるのが正解かと思います。
因みに回路図で、Q3のトランジスターのベースの手前にLEDが謎に4個入っていますが、何でそんな阿呆みたいに4個も直列に入れているのかと言うと、然るべき時に電圧を押し下げて完全にQ3をオフにする為で、これが無いと設定電圧になっても放電がきっちり停止しませんでした。
VF(順方向電圧)が1.5Vくらいの赤色LEDを使ったので4個入れていますが、電圧を-6Vくらい出来れば問題無いので、VFが3V強あるLEDなら2個で大丈夫の筈です。
どうせ、通電を確認するのに何処かにLEDを入れなければならないと思うので、細かい事は気にせずに、ベースの手前に入れて置いて下さい。
安定した12V出力が欲しいならDC-DCコンバータモジュール
鉛電池は満充電時だと12.8Vくらい、10.8Vくらい迄、電圧が低下すると残容量が0の扱いだったと思います。
リチウムイオン電池3セルの場合は、満充電時で12.6Vくらい、10.5V辺りを放電終止電圧に設定して使えば、鉛電池と凡そ同等に使用出来ると思います。
ただ、鉛電池にしろ、リチウムイオン電池3セルにしろ、使用している間にどんどん電圧が下がって行くので、安定した12Vが欲しい場合は、DC-DCコンバータを繋いだ方が無難です。
DC-DCのステップアップコンバータを使えば、リチウムイオン電池2セルからでも12Vを作れますが、元の電圧が低いと取り出せる電流は少なめになります。
12V2A程度の電力を取り出したいのであれば、リチウムイオン電池4セルをDC-DCのステップダウンコンバータで降圧した方が、望む出力を得られそうです。
その内に、リチウムイオン電池4セルの汎用電源も作ってみる予定です。