JFETを定電流ダイオード代わりにしてLEDの順電圧(VF)を比較器の基準に使う

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DIYと自作

定電流が必要な時のJFET(ジェイフェット)

 LEDを点灯させる回路などで、印加電圧に左右されず、微小な定電流が欲しい場合によく使われるのが、定電流ダイオード(CRD)です。
 実は私はCRDを使ったことがないのですが、例えば10mAのCRDを使えば、ある程度の電圧範囲内で印加電圧に関係なく10mAが流れ、20mAのCRDなら20mAが流れます。

 しかし、別にCRDを使わなくても、JFET(Junction Field Effect Transistor/接合型電界効果トランジスタ)のゲート(G)とソース(S)を短絡させて使用することで、ドレイン(D)→ソース(S)方向に定電流が流れる素子として使うことができます。この場合、IDSS(ドレイン飽和電流)に相当する電流が流れるようになり、CRDと同様の働きをするのです。私は定電流が必要な場面では、いつもこちら(JFET)を使っています。

 さらにJFETの場合、GS間に抵抗を入れることで、流れる電流をさらに小さく調整することも可能です。これにより、CRDよりも微小な定電流を得ることができるため、より柔軟な設計が可能になります。

 もちろん、必要な電流値が大きすぎる場合はJFETでの代用が難しいこともありますが、条件が合えば、JFETの方が安価で入手しやすいことも多いです。

 私は、恐らく定番品だと思われる2SK30ATMを、100個入りの徳用袋で購入して常備しています。


2SK30ATMで定電流を作って点灯させたLEDのVFは基準電圧として利用可能か?

基準電圧はどのくらいの精度が必要?

 電気工作で電子回路を組むようになると、比較器(大抵はオペアンプで代用される)を使う機会が増えてきます。
 そうなると、印加電圧に左右されず、常に一定の基準電圧が必要になります。

 もちろん、正確な基準電圧が欲しい場合は、三端子レギュレーター(78xxシリーズなど)を使えば済む話ですが、レギュレーターを使うのは少々面倒なときもあります。
 そんなときは、LEDを含むダイオード類の順方向電圧(VF)が、印加電圧にあまり影響されず比較的安定しているため、「簡易的な基準電圧」として流用することもあります。

 たとえば、トランジスタのVbe(ベース-エミッタ間電圧、約0.65V)を基準に、カットオフ電圧を決めるような回路もその一例です。

 私自身は、まとめ買いした赤色LED(VF:約1.5V)をたくさん持っているので、このVFを基準電圧としてよく使っています。使用したLEDの型番は、SHARP製 φ3mm 赤色高輝度LED「GL3UR45」です。

基本仕様(GL3UR45)

  • メーカー:SHARP(シャープ)
  • 形状:φ3mm(T-1)砲弾型、透明着色レンズ
  • 発光色:赤色(スーパールミノシティ)
  • 発光材料:GaAlAs on GaAlAs
  • ピーク波長:660nm
  • 順方向電圧(VF):Typ. 1.85V、Max. 2.5V(IF=20mA時)
  • 順方向電流(IF):最大30mA
  • ピーク順方向電流(IFM):最大50mA(パルス駆動時)
  • パワーディシペーション(P):最大75mW
  • 逆電圧(VR):最大4V
  • 動作温度範囲:-25°C ~ +85°C
  • 保存温度範囲:-25°C ~ +100°C
  • 端子間容量(Ct):Typ. 25pF
  • 応答周波数(f):Typ. 8MHz

 このLEDは、順方向電流が一定であれば順方向電圧(VF)が比較的安定しており、基準電圧源としての利用に適しています。特に、JFETを用いた定電流回路と組み合わせることで、安定した基準電圧を得ることが可能です。
 詳細な仕様については、SHARPの公式データシートをご参照ください。(データシート



LEDのVFは本当に安定しているのか?

 VFは理論上、印加電圧に左右されずほぼ一定とされますが、実際にはそうでもありません。
 印加電圧が高くなると電流が増え、それに伴ってVFもわずかに上昇します。逆に、印加電圧が低いと電流が減ってVFもやや低下します。
 また、発熱によって電圧が変動することもあり、厳密な基準電圧として使うには精度が今ひとつです。

 しかし、流れる電流が一定であればVFも安定するため、JFETを使って定電流を流すようにすれば、LEDのVFを比較的安定した基準電圧として使えるようになります。


印加電圧がLEDのVFに与える影響をテストする

テスト回路の構成

 以下の回路図のように、2SK30ATMのGS間に10kΩの抵抗を挿入し、LEDをその後ろに接続しています。
 回路に電流計を直列に挿入し、LEDの両端には電圧計を並列に接続しました。
 LEDのアノード(A)に電圧計の赤(+)、カソード(K)に黒(-)を接続しています。

 なお、使用している2SK30ATMはGRランクで、データシートによるとIDSS(GS短絡時のドレイン電流)は2.60mA〜6.50mAとなっています。
 今回のようにGS間に抵抗を入れることで、さらに電流を抑えることができます。


実験環境と測定機器

 電源には、可変出力可能なDC-DC昇降圧回路付きの12Vリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを使用しています(→[過去記事リンク])。
 赤いテスターで電流(μA)、黒いテスターで電圧(mV)を測定しました。


測定結果

7Vを印加した場合

 印加電圧を7Vに設定したところ、回路電流は181μA、LEDのVFは1570mVでした。
 この構成なら、1個のLEDで通電確認用と基準電圧生成の役割を兼ねられるのが便利ですね。

9Vを印加した場合

 電源電圧を9Vに上げましたが、電流は181μA、VFも1570mVで変化なしです。
 2Vの変化では、定電流とVFに影響は出ませんでした。

12Vを印加した場合

 次に電源を12Vにしたところ、電流は182μA、VFは1570mV
 電流は1μAだけ増加していますが、誤差範囲といって差し支えないレベルです。

15Vを印加した場合

 最後に15Vを印加。電流は183μA、VFは1570mVとなりました。
 7Vからの変化としては電流が2μA増加したことになりますが、VFは全く変化していません

結論:LEDのVFは意外と安定していた

 印加電圧を7Vから15Vまで8V変化させても、電流の変化は181μA→183μA(+2μA)だけでした。
 LEDのVFは1570mVで一貫しており、全く変動が見られません

 この結果から、JFETで微小な定電流を安定供給すれば、LEDのVFは実用に足る基準電圧として使えることが確認できました。
 特に、200μA以下の低電流で発熱が抑えられていることも、電圧安定性に貢献していると思われます。


まとめ:簡易基準電圧源としてのLED+JFETはアリ

 今回は、JFETを使って微小な定電流を作り、LEDの順方向電圧(VF)を比較的安定した基準電圧として利用できるかどうかを実測してみました。

 結果としては、印加電圧が7Vから15Vまで変化しても、LEDに流れる電流はわずか2μAしか増加せず、VFは1570mVでほぼ変化なしという、非常に安定した挙動が得られました。

 もちろん、高精度なリファレンスICには敵いませんが、ちょっとした比較回路や、回路の動作確認用など、用途を絞れば十分実用的です。特に、手元に余っているLEDやJFETを有効活用できるのが嬉しいところですね。

 また、通電確認のパイロットLEDとして使いながら、同時に基準電圧も兼ねられるという点も、合理的でちょっと得した気分になります。

 今後は、この定電流LEDを基準にした比較回路やセンサー応用も試してみたいところです。気になる方はぜひ実験してみてください。

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