面白かったよ『デッドストリーム/Deadstream』
2023年、ライブ配信者の女性が車載カメラ越しに怪異へ遭遇するPOVホラー映画『ダッシュカム/Dashcam』(2023/ロブ・サヴェッジ監督)が日本公開されました。
その際、日本の公式ページ(だったと記憶しています)で関連作品として紹介されていたことで、この『デッドストリーム/Deadstream』(2022年)の存在を知りました。
面白そうだと思い円盤の発売状況を調べてみたのですが、当時は日本で取り扱いがなかったため、海外AmazonでDVDを購入して鑑賞しました。
当然ながら映像ソフトは 英語音声・英語字幕のみ となりますが、気になる作品だったので、何度も繰り返し観て、最終的には体感で7割ほど内容が掴めるところまで辿り着きました。
日本未公開作品の場合、それを観たいと思うなら必然的に 海外版DVDでの鑑賞がデフォルト になります。そして困ったことに、日本未公開作品の中にこそ面白そうなホラー映画が山ほどあるため、海外版の円盤購入は避けられません。
ちなみに『デッドストリーム(原題)/Deadstream』の海外版DVDは、当時 2,000円前後 で購入できました。
さて、『デッドストリーム(原題)/Deadstream』ですが、本作は B級感あふれる超常現象ホラー・コメディ映画 で、ファウンドフッテージ形式を採用したPOV作品です。
ジョセフ・ウィンターとヴァネッサ・ウィンター(夫妻)が共同監督を務め、主演もジョセフ・ウィンターが担当しています。ここからは、簡単な概要と感想を交えながら作品について語っていきたいと思います。
『デッドストリーム/Deadstream』のあらすじを簡単に
著作権への配慮のため(不特性多数へのネタバレの自粛)、ネタバレありあらすじの詳細はnoteに移します。
こんな感じの映画です
導入の雰囲気としては、落ちぶれた配信者が『数字を取りにいくために無茶をする』系の話です。
幽霊が出るとかなんとか噂されているボロい廃屋に、勢いだけで突撃して一晩生配信するという、完全に体当たり系のバカな企画。
映画を観ている側としてはこの先の展開は予想がつくので、「いや、絶対ろくな目に遭わんから止めとけよ……」って思うんですけどね。
本人は、再生数のためにノリノリ。これが嫌な主人公なら「よし、逝ってこい!」で終わるんですが、この映画の主人公は別に嫌なやつでもないので、なんか気の毒に感じるんです。
映画の中の人を心配しても意味ないんですが、主人公をちょっと応援したくなってしまう映画でした。
※注意事項
英語字幕のDVDで作品を鑑賞しておりますので、間違ったストーリー解釈をしている可能性もあります。全てを鵜呑みにしない様に、ご注意下さい。
あらすじ
主人公は動画配信者で、フォロワーを増やすため、かなり無茶な企画へ踏み切るところから物語が動き始めます。
舞台となるのは、幽霊が出ると曰くつきの廃墟。
そこで一晩泊まり込んで生配信を行うという、絶対にろくな目にしか遭わないことが予想されるチャレンジです。
ショーンは配信のための装備を整え、深夜に大荷物で廃屋に不法侵入します。
ショーンはビビりながら、屋敷内を探索。すると自然現象で解釈するには不可解な出来事が次々と発生します。
実況は盛り上がり、視聴者からはコメントによる無茶な煽りやリクエストが飛び、ショーンはそれに極力答える方針で、「ライブ配信ならでは」の緊張感と無責任な笑いが同時進行する。
やがて、ショーンのいる屋敷内に、なぜそこにいるのか説明のつかない来訪者が現れる。
そして、来訪者と共にある“判断”をノリ任せで軽率に下した瞬間、状況は最悪の方向へと急転する。
そこから先は、視聴者がショーンにチャットやコメントで助言を送ったりするが、すでに手遅れだったり実行不可だったりで、状況は悪化の一途を辿ることになる。
後半になると、ショーンは “ダクトテープ万能信仰” とでも言うべき独自のこだわりを心の支えに、屋敷で起きている出来事の背景を探り始める。
やがて、異様な気配や説明のつかない現象が次々と表面化し、少なくとも味方ではなく、そして人でもない――いわば《Unknown》たちが姿を見せ始める。
追い詰められる中でも、彼は配信を続けたまま最後まで抵抗する道を選び、必死に生還の可能性を探り続けていく。
ラストを迎えるのは、感動のフィナーレか、それとも破滅か――。
それは、ぜひ実際に鑑賞して確かめて欲しい。
『デッドストリーム/Deadstream』まとめ
『デッドストリーム(原題)/Deadstream』は、2022年3月11日にサウス・バイ・サウスウエストで世界初公開され、同年10月に米国で一般公開された作品です。
系統としては『グレイヴ・エンカウンターズ』や『コンジアム』に近い、いわゆる怪奇スポット突撃型のファウンドフッテージ。
ただし前記2作品とは異なり、かなりコメディ寄りの作風です。
私としては“素直に笑えるホラー”と呼びたいタイプで、こういう作品は本当に大好きです。
作品のテーマと主人公キャラが上手く噛み合っている作品
物語の中心にあるのは、インターネットが育んだ “数字のために無茶をする配信者文化”。
視聴者に振り回される配信者の主体性の薄さ、そして 無茶で無鉄砲な行動が生む滑稽さと危うさ が、作品の魅力として描かれています。
向こう見ずに暴走する直情的な主人公ショーンの姿は、コメディリリーフとして描かれています。危機的状況のはずなのに、あまりにバカすぎて、どうしても笑いのツボに入ってしまいます。
ショーンはまず行動して失敗し、そのあとで「今のが正解だったのか?」と振り返るタイプ。まさに 後悔先に立たずを地で行く典型例 のキャラクターと言えるでしょう。
換言すれば、『死霊のはらわた』のアッシュ・ウィリアムズから武器と戦闘力を奪い、行動力だけ残したらこうなるのでは? と思える人物像です。
さらに、コメント欄の重要情報に気付くのがいつも遅すぎるため、状況はどんどん混沌としていきます。
とにかく 間が悪い。憎めないのに、どうしようもなく バカとしか言いようのない選択と行動 が積み重なり、自縄自縛のように自から救いようのない展開へと踏み込んでいくそのスタイルこそが、本作ならではの独自の面白さと言えます。
この、バカだからこそ愛しい。応援代わりに 罵倒したくなるタイプ のキャラクター。私にとってショーンは、まさにそんな存在です。
CGではない実写特撮は心に染みる
予算規模としては決して大作ではありませんが、怪奇描写へのアプローチは非常に攻めています。
怪物は安直なCGに頼らず、実写特撮で表現。役者が血糊や正体不明の汚濁液にまみれるという、リアルに“汚い”質感を全面に押し出した撮影方法を採用しており、今どきの映画としては珍しい方向性です。
80年代B級スプラッター好きでも納得させ、満足できる作り込みの作品と言えるでしょう。
この雑さと勢いで押し切るパワーは、最近増えてきた美しい映像美やアート性を前面に出す“意識高い系”ホラーとは一線を画した、洗練とは真逆にある、原始的な深い味わいがあります。
個人的にはとにかく気に入った一本で、私と感性の近い人なら間違いなく強烈に刺さるタイプの作品だと思います。
興味が湧けば、ぜひ鑑賞してみてください。
映画は家でゆっくり観る派
私が観たのは2023年ですが、2024年の夏には日本でも劇場公開され、現在(2025年時点)は動画配信でも観られるようになっています。
ちなみに私は、どうせお金を払うなら円盤を買って家でリラックスしながら何度も観返す派なので、多分劇場には行きません。家でじっくり味わう性分です。
一回観ただけでは内容を理解しきれないというのもありますし、気に入ったシーンを巻き戻して確認できない環境では満足できません。

