Amazonで50000mAh約2千円モバイルバッテリー購入 嘘大容量のレビュー

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生活

 Amazonで「50000mAh」などと大容量をうたう格安モバイルバッテリーを見かける機会が増えていますが、その多くは実際の容量が表示よりも大幅に少ない“容量詐欺”商品です。
 どう考えても実際にそこまでの容量はないと思いますが、少ないなりに、値段を考えればそれなりに納得できる容量はあるのかもしれない――。
 そんな淡い期待を抱きつつ、本記事では、あえてその地雷を踏みに行く形で複数台を購入し、見た目や重さ、テスト結果から“本当に使える容量”を検証しました。


新たに購入したモバイルバッテリー × 2

その1

 1つ目は以下の商品です。元の価格は2,999円ですが、お一人様一回限りの1,000円オフクーポンが付いていたため、実質1,999円で購入しました。

 商品ページには「厚み2.8cm・重量450g」と明記されています。図解では、内部にリチウムポリマー電池が3セル積み重ねてある様子が描かれています。
 ただ、厚みが3cmにも満たないというのは少し薄すぎで、その点がどうしても不安材料です。
 本当にセルが3段重ねになっているかは微妙なところですが、実際に手に取って調べない限り真偽は分かりません。図を信じて、3セルで最低30,000mAh程度あることを期待しての購入です。

 Amazon の商品ページには「過去1か月で2,000点以上購入されました」との記載もあり、それなりに売れているようです。


その2

 2つ目は以下の商品です。元の価格は3,199円ですが、30%オフのクーポンが使えたため、960円引きとなり、実質2,239円で購入しました。

 クーポンは何度でも使えるようですが、20%オフの時もあるので、できれば30%オフのタイミングを狙うのがお得です。
 商品ページでは「厚み4.5cm・重量606.5g」と記載されており、この厚みなら少なくとも3セル分はありそうです。
 こちらも「容量50,000mAh」とうたっていますが、仮に4セル積み重ねてあるなら、かなりの“当たり”商品といえるでしょう。

 Amazon によれば「過去1か月で1,000点以上購入された」商品とのことです。


この2つをテストします

 なお、どちらの商品も Amazon 発送(これでなければ買いません)なので、実測容量が自分の最低基準を下回った場合は即返品する予定です。
 もちろん、どちらも実際に50,000mAhあるとは思っていません。3.7Vで30,000mAh以上あれば納得するつもりで購入しました。
 容量やサイズ・重量を考えると、エネルギー密度的に50,000mAhはあり得ません。しかし価格が約2,000円前後なので、もし実測で30,000mAh程度あれば、容量水増しの商品であっても「買って損はない」と判断します。

 比較の目安として、ダイソーの 3.7 V・10,000 mAh モバイルバッテリーは税込 1,100 円です。3.7 V 換算で 1 円あたり約 9 mAh 以上の容量があれば、コスパ的に“お買い得”と判断します。


1,999円で購入したバッテリーその1、容量実測結果

測定のルール

 届いたバッテリーを一度、満充電にします。その後に、バッテリー → USB 電流電圧チェッカー → 電子負荷の順に繋いで 2A の定電流モードで放電し、停止するまでの容量を測定します。
 さらに、容量 0 の状態から再度満充電になるまで、USB 電流電圧チェッカーを介して充電し、どれくらい電力が入ったかも測定します。
 参考までに、使用する USB 電流電圧チェッカーと電子負荷は、昔 Amazon で買って以来、新しく購入したモバイルバッテリーの容量測定時にずっと愛用している以下の製品です。


放電時の容量

 Amazon の図解説明通りに、モバイルバッテリーの中にリチウムポリマー電池セルが3枚入っているのを期待していましたが、信じた自分が阿呆なのか、それは完全に裏切られました。

 上の画像が、満充電後に 5V2A で容量 0 になるまで放電した結果です。
 容量は 5V 10,597mAh、54,289mWh でした。……ということは、3.7V 換算で約 14,500mAh です。
 電圧の変換では熱になって電力が無駄になるロスが約 20% 発生するので、それを計算に入れても 17,400mAh 程度しかありませんでした。
 この数字で、セル 3 枚は絶対に入っていないだろうことが判明しました。
 さらに、容量から推し量るに、10,000mAh のセル 2 枚入りも怪しくなってきました。
 恐らく、容量の少ない 9,000mAh のリチウムポリマー電池セルを 2 枚使っているだけな気がします。

 いや参りましたね。
 相手が一枚上手というか、嘘の説明図解を用意して「このモバイルバッテリーは大容量ですよ」と視覚的な部分から購入者を欺いてくるとは、夢にも思いませんでした。
 この出品者、説明からして手の込んだ、かなり悪意の高い売り方をしていますね。

 今回は、売り手にうまく騙されてかなり駄目なハズレを引いてしまいました。
 本当、Amazon マーケットプレイスの出品者は信じちゃいけませんね。
 何にしろ、この商品は完全な期待外れでした。
 やはり厚み 3cm 程度のモバイルバッテリーでは、中に入るセルは 2 枚が限度、容量も頑張っても 20,000mAh が上限だということです。

 ……で、コスパ計算ですが。
 3.7V の電圧で価格 1 円あたり 8.7mAh の容量しかないので、さすがにお得感 0 ですね。
 これは返品するしかないかもしれません。


充電時の容量

 上の画像、充電終了後に長時間放置してしまったので充電に掛かった時間は当てになりませんが、入った電力は信用しても大丈夫です。
 充電器からは 5V 13,970mAh の電力がモバイルバッテリーに流れました。
3.7V 換算で約 19,000mAh ですが、ロス分もあるので、これが全部モバイルバッテリーに蓄電されたわけではありません。
 そもそも、他の手持ちの 20,000mAh モバイルバッテリーなら、空になってからの充電だともっとたくさんの電力が入るので、このモバイルバッテリーの実容量はやはり 18,000mAh 程度の線が濃厚になりました。

 充放電テストの結果から判断するに、これは粗悪品の部類だと思います。控えめに言っても、ろくな商品ではありません。
 モバイルバッテリーに多くを望まず 20,000mAh 近い容量があれば満足、という人にも、値段と実容量の比較から鑑みるに、これを購入する利点は薄く、全くおすすめできません。
 仮に分解してリチウムポリマー電池の生セルを取り出して使うとしても、ダイソーのモバイルバッテリーを買って使うほうが無難です。


外観や重さなど

 外観に関しては樹脂製で、よくあるモバイルバッテリーとしか言えません。特に変わったところはありません。
 電力残量のインジケータがありますが、放電テストの時に眺めていた限りでは、この数字は割と正確だと思います。

 本体の厚みですが、家にある他の 20,000mAh のモバイルバッテリーと並べて比べてみました。

 3 つとも厚みがほとんど同じですね。
 現状のリチウムポリマー電池のエネルギー密度では、20,000mAh 前後の容量のモバイルバッテリーだと、どうしても大体このくらいの大きさと厚みになるわけです。

 一応、気になったので重量も測ってみました。

 20,000mAh のモバイルバッテリーは、大凡 300g 後半〜400g 前半程度の本体重量の製品が多いです。
 このモバイルバッテリーは若干重めですが、その範囲から逸脱してはいません。

 ぶっちゃけ、充電式のリチウム系電池を使った電源で 50,000mAh の容量を謳うなら、本体が 7cm 以上の厚み、1kg の重量になって然るべきです。
 小型・薄型・軽量で大容量のモバイルバッテリーは、現時点の人類の技術力では製造不可能であり、物理的に実在し得ません。
 よって、小さく薄いくせにやたら大容量のモバイルバッテリーは、すべて容量詐欺の商品だと考えるべきです。
 その中で、値段と実用量が釣り合っていれば「買い」だというだけのことです。


容量は嘘だが急速充電は対応している

 なお、このモバイルバッテリーは急速充電に対応しており、5V3A、9V2A、12V1.5A の 3 出力を持っているようです。
 急速充電に対応している部分だけ見れば、ダイソーのモバイルバッテリーよりも性能的には高いといえます。
 今回の自分の場合は、急速充電の有無より蓄電量の大きさのほうが重要だったので、30,000mAh に容量が届いていない時点でありがたみが薄れますが。


高評価を買っている出品者

 話は変わりますが、中華製の何かしらを買うとよく見かける「星 5 レビューを書いてくれたら Amazon ギフトをプレゼントします」というメッセージカード(下の画像)が、このモバイルバッテリーにも同封されていました。

 このモバイルバッテリーの場合、星 5 のレビューを書いたら、なんと 1,500円分のギフト券をプレゼントしてくれるようです。
 つまり、条件さえ満たせば破格の約 500円で 20,000mAh のモバイルバッテリーが手に入るという寸法です。
 本当に貰えるか否かは試していないので不明ですが、もし貰えるのなら、提灯レビューの報酬額として 1,500円はかなり大きいですね。

 そんなやり取りが Amazon マーケットプレイスでは普通にまかり通っているようで、結果としてこの手の詐欺商品に星 5 のレビューが数多く並ぶわけです。
 要するに、カラクリとしては金で星と高評価を買っているだけですから。
 まあ、買い手としてもレビュー 1 つ書くだけで商品が安く手に入るのなら、決して損はしないわけですが……。

 もっとも、同封のカードに「ギフト券の話はレビューに書かないでね!」と注意書きがあるので、Amazon マーケットプレイスの出品規約的には、この手の取引の持ち掛けはさすがに拙いのかもしれません。
(後に Amazon カスタマーで確認したら完全な規約違反だそうです)
 まあ、提灯レビューばかりだとレビューの信頼性が著しく低下しますし、普通に考えて褒められる行為ではないですね。


結論

 畢竟、このモバイルバッテリーは、急速充電対応で 18,000mAh 程度の容量があれば満足、かつ、星 5 レビューを書いて Amazon ギフト券を貰うつもりがある人ならば、無料に近い値段で手に入ってお得なので、おすすめと言えなくもありません。
 逆に、詐欺の片棒を担ぐようなレビューを書く気がないなら、詐欺商品だし容量も少ないし、お値打ちでもないので、買うのはやめておきましょう。

 私は結局、このモバイルバッテリーは総合的な判断から返品しました。


2,239 円で購入したバッテリーその 2、容量実測結果

こちらも同様のルールで測定

 こちらのバッテリーは、Amazon のレビューでも「5 V で 27,000 mAh 程度の容量がある」との情報を見かけました。
 最低でも 3.7 V で 30,000 mAh、ワンチャン 40,000 mAh あるかも……と少し期待しつつ、一度満充電にした状態からの放電と、電力がなくなってからの再充電によって、モバイルバッテリーの実容量を計測します。


放電時の容量

 このモバイルバッテリーは最低でも 30,000 mAh の容量があると想定し、テスト時間を短縮するために 3 A で放電することにしました。
 満充電にはかなり時間がかかりましたが、ディスプレイに 100 % と表示されたのを確認してから放電を開始しました。

写真がブレてしまいました。でも読めるのでご勘弁。

 上の画像が放電テストの結果です。5 V で 19,436 mAh だったので、3.7 V に換算し、変換ロス分を加味すると約 31,000 mAh 程度だと思われます。
 この数字から、中身は 10,000 mAh のリチウムポリマー電池セル × 3 でほぼ確定と考えられます。
 残念ながら、さすがに 40,000 mAh はありませんでした。もっとも、30,000 mAh 程度と予想していたので、ショックは小さいです。

 このモバイルバッテリーは容量詐欺商品であることは事実ですが、1 円あたりの容量は約 13.4 mAh。価格と容量のバランスとしては「まあ許容範囲かな」と思えるレベルです。
 実際、30 % OFF クーポンの適用が前提にはなりますが、ダイソーのモバイルバッテリーを買うよりもお得といえます。


充電時の容量

 30,000 mAh のバッテリーの充電には時間がかかると予想されたので、寝る前に USB 電源に挿し、朝まで放置しました。……が、使用した充電用電源が非力で、5 V・1.5 A 程度のペースだったため、朝になっても充電は終わっていませんでした。
 1.5 A での充電では、単純計算で 20 時間程度は必要になります。

 上の画像のように、充電完了後に確認したところ、5 V で 27,030 mAh 入っていました。3.7 V 換算では 36,527 mAh になりますが、変換ロスを考慮すると実容量は 30,000 mAh 程度で間違いないでしょう。


外観・重量・急速充電対応など

 このモバイルバッテリーの化粧箱は豪華で、本体も見ただけで分かるほどの分厚さです。
 30,000 mAh でこの厚みなので、本当に 50,000 mAh の容量がある製品であれば、さらにぶ厚くなるはずです。
 にもかかわらず、化粧箱や本体には実容量が 30,000 mAh しかないのに「50,000 mAh」と大きく印字されており、悪質さを感じます。

 画像では分かりにくいですが、電力残量を表示するディスプレイは直方体の側面──一番面積の小さい面(縦置きしたときの天面)にあります。
 電源ボタンは押すというよりも、指の腹を軽く当てるとワンテンポ遅れて反応するタイプです。

 モバイルバッテリーの厚みを比較するため、上から 30,000 mAh、2,000 mAh、10,000 mAh を並べてみました。
 容量 = リチウムポリマー電池セルの重ね枚数、というのがよく分かります。
 繰り返しますが、エネルギー密度的に「薄型で超大容量」のモバイルバッテリーはあり得ません。どうか騙されないでください。

 余談ですが、最近出回り始めているリン酸鉄リチウムイオン電池はエネルギー密度が低いため、同容量でもリチウムイオンやポリマー電池よりさらに大きな体積になります。

 重量測定の結果は画像の通りです。
 本体重量は 615 g。30,000 mAh の容量でもかなりの重さです。
 もし 50,000 mAh のモバイルバッテリーであれば、本体重量は 1 kg 近くになるでしょう。
 大容量を求めるなら、重くなるのは避けられません。

 なお、この製品は PD・QC などの急速充電に対応しており、5 V・3 A、9 V・2 A、12 V・1.5 A の出力モードを備えています。


結論

 総合的に見て、このモバイルバッテリーは価格が安く、実容量も 30,000 mAh あるため、出品者の表記が虚偽であると理解した上で購入するなら悪くありません。むしろおすすめできる部類です
 大容量ゆえ充電には時間がかかりますが、その分、接続した USB 給電機器を長時間駆動できます。

 大容量モバイルバッテリーが欲しい方にとっては、価格的にも十分おすすめできる製品です。
 携帯性を優先すれば容量が犠牲に、大容量を優先すれば携帯性が犠牲になる──これは自然の摂理です。


本当に 50,000 mAh の容量があるモバイルバッテリーなら、デカく・分厚く・重くて当然。騙されないで!

 参考までに、Amazon でも販売されているモバイルバッテリーの中には、本当に 50,000 mAh の容量を備えた製品も存在します。
 しかし、それらは参考リンクの画像を見れば分かるように、もはや「モバイル」というより小型のポータブル電源といった風貌で、見た目は巨大、まるでレンガのようです。
 現在の人類の技術では、これくらいの大きさがなければ 50,000 mAh の容量を確保することは不可能なのです。

 小型・軽量・大容量という説明を、安易に鵜呑みにしてはいけません


安いモバイルバッテリーは基本、容量詐欺商品だと考えて購入し、実容量の確認を推奨

 Amazon などの通販サイトには、容量詐欺のモバイルバッテリーが蔓延しています。
 そのため、購入したモバイルバッテリーの容量が正しいか確認するために、以下のような安価な放電容量テスターでも構いませんので、1 台持っておくことをおすすめします。
 そして、もしインチキな商品を掴まされたときのために、できるだけ 100 % 返品保証 がある「Amazon 発送」の商品を選びましょう。


上の2台とは別に、40000mAh・1,290円のモバイルバッテリーも買ってみたが……

 実は、1,999円で購入したバッテリーを返品した後、50%OFFクーポン付きの40000mAhモバイルバッテリーを見つけたので、1,290円で購入しました。
 一見するとかなりお値打ちに思えますが、クーポンを使えるのは恐らく一人一回限りだと思われるため、購入できるのは1台限定っぽいです。

 こちらは急速充電には非対応で、厚み的に見ても実容量はおそらく20,000mAh程度と予想されます。それでも1,290円ならかなりお買い得だと思って買いました
 ……が、その予想は無情にも裏切られることになります。

 このモバイルバッテリーについては、別の記事で詳しくレビューしています。
 ――To be continued!


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